甘い短い物語
□【ハイキュー!!】嘘
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4月1日。
この日は私にとってバレンタインやホワイトデーよりも大切な日だ。
『皆に嘘をついていい』なんて素晴らしい日だと思う。
1週間かけて絞り出した嘘。
『怪我してバレーできなくなった』これはシャレにならないから却下。
『海外に引っ越し』これは受け入れられた時が悲しいからやめた。
『サッカーに鞍替え』これも自分はできないからやめた。
色々な嘘を考え、相手の反応を予想して思考錯誤。
本当に長い1週間だったが、皆の驚く顔やリアクションが見れるなら1週間の苦労も大したことはない。
そんな私が考えた嘘。
大袈裟でなく、作り話っぽくない現実に起こりそうな…嘘。
それは
『彼氏ができた』
というものだ。
高校。
それは青春を謳歌する場所。
彼氏ができてもおかしくはない年頃だ。
岩ちゃんや、徹には毎年欠かさずに嘘をついていたせいで嘘はつけない。
なら、新境地!烏野のメンバーに嘘をついてやる!
そう意気込んで私は教室へと歩みを進めた。
まず視界に入ってきたのは月島と山口。
この2人になら肩慣らし程度に嘘をつける。それに、もしこの2人がバレー部の誰かに話してくれたら願ったり叶ったりだ。
「おはよー!
名無しさんちゃん、今日早いね!」
「いつも遅刻ギリギリなのに…雨でも降るのか?」
「失礼だな月島ぁ…
山口おはよう
ねね、山口…ちょっといい?」
月島は嘘とかすぐ見抜きそうで怖いから山口だけを教室の後ろに呼ぶ。
あぁ…ほぼ毎日山口と女子トークしていてよかった。
彼氏ができた。なんて報告をできる男子は山口くらいだ。
「ん?どうしたの?」
「あのね…私彼氏ができたの。」
「え!本当に!?
おめでとう!!相手は!?誰誰?」
やはり、食いつき良好だ。
山口はこの手の話を聞くのも誰かに喋るのも好きな奴。
流石に先輩達には言わないだろうが、山口が日向や月島、飛雄に言ってくれれば先輩達にも話はいくだろう。
そうなれば後は部活の時にネタばらし、皆の驚くリアクションが見れて結果オーライだ。
「相手は先輩なんだ」
「烏野!?どんな人?」
「烏野だよ。どんな人かはまだ内緒」
少しワザとらしく…でも現実的なテンションでそう言うと山口は完全に騙された。
その後すぐに担任が入ってきて、朝礼。
山口と私はそれぞれの席に着き、これで下準備は完了だ。
後は放課後を待つのみ。
今からワクワクして、今日の授業は居眠りしなくて済みそうだ。
あぁ、早くネタばらししたいな…と思いながら私は窓の外を眺めた。