銀恋

□一方通行の想いは心の中で!
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最近私の後をつける怪しい影がある。
どこに行くにもその気配は私の後ろにあって、振り向くとどこかに隠れ…捕まえようとすると素早く逃げる。

でも一定の距離は保ちそれ以上離れる事も近づく事もない。

世に言うストーカーというやつだ。


でも大丈夫だと思ってた。
相手からして見れば私は帯刀している真選組の隊士だし…そんな大胆なことしてこないだろう。

私はそう油断していたのだ。




そんなある日、見回りから帰りお風呂に入った私は脱衣所で着替えをしていた。
そして視線を感じ、私の目線の斜め上にある窓を見たのだ。

そこにはカメラを構えながら木に登り写真を撮る男の姿。


この瞬間夜だということも忘れ叫びながら脱衣所の扉をくぐる私。
髪も乾かせて無いし、浴衣も着崩したままだという事を忘れただ走った。


ヤバイヤバイヤバイ!!
頭の中でそんな警報が鳴り響く。


脱衣所を出て左に曲がるとたまたま通りかかった土方さんに思いきりぶつかる私。


「ってーな…前見て移動しろっていつも言ってん………だろ………」


土方さんは私の異変に気付いたのだろう目を見開いたまま私を見る。

「お前なんてカッコだ!!」
視線をそらす彼に今は縋るしかない。
嫁入り前の女がこんなはしたない格好をしていてはいけないのは分かってる。

でも…


「土方さんっ………たすけてっ……」



涙を流しながら土方さんに抱きついてしまった私を彼が拒絶する事はなかった。


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廊下の曲がり角で誰かと接触した。

そのぶつかる威力の軽さから、名無しさんだという事は容易に想像ができ、俺は注意しながら視界に名無しさんを入れる。


そこにはいつも通りヘラヘラした名無しさんがふざけながらスイマセーンなんて言うもんだと思ってて、予想外な名無しさんの姿に自分の目が見開かれるのが解った。



着物では無い薄手の浴衣を着崩し、胸元や足は露わになり…濡れたまま下された長い髪はその薄い生地に張り付いていて。

何をそんなに慌てたのか急いで目をそらすと体に衝撃が走る。


自分の体に温かさを感じて初めて自分が抱きつかれているのを自覚した。


なんだと思い、名無しさんを見下げると泣いているのだろう…肩がわずかに震えているのがわかる。


そっと右手を肩に置き、左手で背中をさすると少し落ち着いたのか深呼吸するのが解った。
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