空高く

□練習
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「みんなおはよー!!
さぁ練習はじめるよ!」

「あ、おはようございます。」


「ってあれ?
朝練来てるの名無しさんちゃんだけ?」

この高校の女子バレー部は朝練の集まりが悪い。
別にバレーがみんな嫌いなわけではないのだが、弱小ならではのヤル気が出ないというやつだ。

「そっかぁ。
まぁ夕練にはみんなも来るし、朝練は体温める程度で終わろうか!」


「了解です!!

なにしますか?
ランニングですか?」

「いやいや!朝からランニングは辛いでしょ!
サーブ練でもするかな!」

「ボール取ってきます!」


やる気があれば何でもできる。
そんなテレビで聞くようなポジティブ思考は私には無いが、
弱小は弱小なりにできることがあるんじゃないかと私は思う。

やらずに負けるより、精一杯頑張って負ける方がどんなに気持ちがいいかと…


道宮先輩との朝練を終えて教室に向かうといつも月島と居るはずの山口の姿がない。

「おはよー。
山口くんは?」

「山口寝坊だよ。
なんか昨日寝れなかったんだって。」


「昨日私も寝れなかった。

昨日暑かったよね。」

「あー、寝不足だからいつも以上に酷い顔してるのね。」


「失礼だな君は。
ま、朝からその毒舌聞くと学校だなって気合い入るからいーけどさ」

それにしたってこいつは口が悪い。
いつも以上に酷い顔なんて、男の子が女の子に言っていいセリフではないと思う。


なんて、いつも通りの朝を終えて順調に授業をこなしていく。
午前中のうちに来た山口と月島とお昼ご飯を食べて午後の授業をまた淡々とこなした。

部活が始まるまで30分。
いつもは終礼が終わるとすぐに武道館へと向かう私の腰は椅子から動かなかった。


「ね、部活行かないわけ?」

いつも通りじゃない私の様子に月島と山口が近寄ってきてくれる。

「んー、行くでももうちょっと待って。
体が怠い。」

昨日寝ていなかったのがこんなに辛いと思わなかった。
もしくは寝れなかったからと、強豪校のDVDを見ていたのがたたったのかもしれない。



「でも、あと10分で開始だけど?
体調悪いなら今日は帰れば?」

「ボール触んないと、それこそ体調崩す。

ん、もう大丈夫!

部活行ってくるわ。」


重い腰を上げて部室へと急ぐと心なしか自分の足がフラフラするように感じるが『病は気から』と言い聞かせて私は部室の扉を開いた。









練習が始まって早1時間。
残りの練習時間を半分残したところでその事件は起こる。

レシーブを相手コートに打って着地しようとした足元に先輩の1人がボール入れをひっくり返してしまって出てきたボールの一つがあったのだ。

「名無しさんちゃん危ない!」

「え?」


いつもの体調なら避けれたそのボール。

眠気のせいで思考がはっきりしていなかったために避けられなかったボールを私はおもいきり踏んでしまった。

その瞬間バランスを崩して横に倒れた私を襲ったのは左足の大きな痛みだった。
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