空高く

□SOS
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数分前の最悪なタイミングで登場した幼馴染。
真っ赤な顔で動揺を隠しきれない2人にフォローを入れてやる余裕もなく俺の眉間には深い皺ができていた。


…聞かれたくなかった。
聞いて欲しくなかった。
男らしくて面倒見のいい俺の自慢の幼馴染の本心。

あぁそうか…俺は自分が認めた岩ちゃんと同じ女の子を好きになった時点で自分に勝ち目などないと理解していたんだ…
名無しさんへの気持ちを隠して。
隠れて告白して…岩ちゃんが居ないタイミングで毎回思いを伝えていた。
真正面から戦ったら勝ち目が無いってわかってたからズルい方法ばかり選んでいた。

そんな事を考えていると幼馴染2人を写す視界がじんわり揺らぐのがわかる。
目頭がツンと痛い。
鼻先が熱い。

あぁ…この涙が溢れてしまう前に逃げなきゃ。


「お熱いねお二人さん!
じゃあ…邪魔者は退散しようかな?」

いつも通りいつも通りと心に言い聞かせて、涙引っ込めと念じて俺は軽く言葉を発する。
幼馴染2人の言葉を待たず、早く顔を隠したい気持ちが勝って俺は振り返り歩き出す。

「……少し話すか…?」
「うん…」

俺の背後から聞こえるその会話に目をギュッと瞑ると俺の目からは無残に涙が流れ落ちた。


自分の家の玄関をくぐり扉を閉めてズルズルと座り込む。
「…っ……なんで…こんなに好きなのかなぁ……」

さっきから制服のポケットの中で鳴り続けている携帯の通知はきっと名無しさんを諦めるつもりで付き合ってしまった女の子からだ。

「…付き合った初日から連絡もまともにしないとか俺最低……」


いつもより重く感じるスマホを操作して彼女に電話をかけた。

「…ごめん…ちょっと忙しくて連絡返せなかった」

鼻声のまま電話をかけたからか彼女は電話越しに心配の言葉をかけてくれる。
男には無い敏感さを持ってて女の子って本当に凄いと思う。
…名無しさんも俺や岩ちゃんが悩んでたりするときは親より先に気づいてくれてたっけ……って彼女との電話中にも俺の頭は名無しさんばっかりか…


「俺ね……本当はもう何年も好きな女の子がいるんだ…」

こんな最低な俺でもきちんとしなきゃ。
また名無しさんに怒られる。
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