陽炎魔法パロ
□なみだ
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頬に触れていた指が、静かに離れていく。
そして、温度を失くした手は力なく投げ出された。案の定、それらはもう動く事はない。
間に合わなかったのだ。わかっていた。
回復魔法を得意としない自分には彼を助ける事はできないんだと。でも僅かな可能性に賭けてみたかった。……彼は…死んだんだ。
「……アヤ…ノ……ッな、あ…」
呼びかけても、返事が返ってくる事はない。
涙はもう枯れてしまった。自分もかなり憔悴しきっていて、かつ魔力も底を尽きたのでそこからの記憶はない。ただ、最後に彼に触れた唇だけが、ひどく…暖かかった。