白球を追いかけて

□第6話「突然の怪我」
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夜、私はグラウンドにいた。


昨日まではあんなに活気づいていたのに、夕食の時、部全体が暗く落ち込んだ雰囲気だった。
クリス先輩の離脱は相当影響を及ぼしたらしい。


『明日からどうすれば・・・』

??「よう。」

一人ホームからグラウンドを眺め、これからのことを考えていると声をかけられた。

『一也。』

御「一人で何やってんの。」

『考え事・・かな。ここに来たのはなんとなくだよ。一也は?』

御「俺も同じようなもんだよ。今日はいろいろありすぎただろ?」

『そうだね。誰も予想し得なかったし。私はさぁ、なんで気付けなかったんだろ。』

御「俺も正捕手になれたけど、こんな形で正捕手になりたかった訳じゃないしさ。」

『一也・・・』

御「まあ、なったからにはしっかりやるけどな。クリス先輩と正捕手争いできなくなったとはいえ、クリス先輩の思いは受け継いでるしな。
今でもあの人は俺の憧れに変わりないし。
だからお前もさ、あんまり自分を責めんなよ。」

『えっ?』

御「自分が気づいていればクリス先輩が怪我することなかったとか考えてるんだろうけど、
気付けなかったのはお前だけじゃないし、クリス先輩だって責めたりしないと思うぜ?
いつまでも、落ち込んで前に進めない方がクリス先輩に怒られるんじゃないか?」

『そうだね。大事なのはこれからどうするか、だよね。』

私が今できること、これからできることを精一杯やらなきゃ。

御「そうそう。」

『ありがとう、一也。おかげでちょっと元気出たかも。』

御「いいって、落ち込んで弱ってる貴重な栞ちゃんも見れたことだし。」

『う、うるさい!自分だって弱音吐いたくせに。ちょっとだけど。』

御「はっはっはっ、そうだっけ?」

『もういいや。・・・そろそろ戻ろっか?』

御「だな。」


一也だって、いろんな思いがあったはずなのに気を使わせてしまったみたいだ。
でもそのおかげで、現実を受け止め前を向くことができた。
クリス先輩の離脱は大きいけど、甲子園予選まであと少し。
今やれることを精一杯やっていかないと!!

あっ、一応今度一也にお礼しとこ。


次の日の練習では、いつものような活気が野球部に溢れていた。
聞けば皆同じ思いらしく、クリス先輩の分も頑張っていこうと決心したそうだ。


こうして、野球部はさらに練習に熱が入るのでした。


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