にっし

□07/19 山田真綾
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「教科書58ページぃ」

語尾が伸びる独特の口調で、理科の先生は言う。

300ページくらいある教科書の6分の1くらいはもう

終わってしまったわけだ。




受験、なんて言葉はいまのアタシ達には関係ない。

そりゃあ中学三年生ですけど。

学年TOPの、その、根本的にアタシとは頭の構造が違うような、

そんな人達は今のうちからやれ塾だやれ講習だって

言われてるのかもしれませんけど。

それなりに勉強やって、そこそこの順位をキープしてるアタシには関係のない話。

それはこのクラスの大半に対して同じことが言えると思う。

七クラスあるこの学年で最後のクラスであるだけ、

なんとなく寄せ集めみたいなものが集まって出来たこのクラス。

TOP20に入る人が2人いる程度。中間ぼちぼち、その他はほとんど半分以下。

実際にテストを見たわけではないけど、なんとなくそんなかんじがする。

とりあえず三ヶ月たったけど、クラスの中のグループみたいなものはある程度固定されてきて。

でもまだなんとなく、ぎこちない。

お互いを探り合うようは異様な空気。

ななちゃんの柔らかく編んだ三つ編みの数。

理沙の作った笑顔。

理科の先生の語尾を伸ばす口調。

とか。あ、なんかむしゃくしゃする。

空斗とかだったらこういう時は非常にわかりやすく、態度に示すけど、

アタシはその気持ちを押し殺して、冷静さを装いノートを開く。

真綾の字、可愛いよなー。羨ましい。

ななちゃんが呟いた言葉を思い出す。

そんな可愛い声でゆわれてもなぁ。と思いつつありがと、と言った覚えがある。




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