にっし

□07/19 石井美希
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「たけのこの里よりきのこの山やんな?」

自分の席に座りながら、瑠璃子は言った。

その言葉に、私はえーっと大声をあげる。

「ありえーん。瑠璃子、たけのこの里食ったことないん」

「あるわ、あって言っとんねん。」

本当にありえない。瑠璃子がきのこ派だったとは。

どう考えてもたけのこの方が美味しい。

しっとりとしたクッキーに薄くのばされたチョコ。

きのこの山にはないあの食感を思い出し、瑠璃子を睨んだ。

瑠璃子は笑いながらポッキーを手にとる。

「うちもきのこの山派ァー。」

携帯をいじっている葵が右手をあげた。

敵が増えた。すがるように奈々を見ると、

「私はどっちも好きやけどな」

と困ったように笑う。

唯一の望みに裏切られた私は大袈裟に机に手をつく。

「奈々んアホー!」

「相変わらず美希はオーバーリアクションやな」

「ほんまにな。アホなのは奈々やなくて美希やろ」

葵の金色の髪が、窓から入る日光をうけてキラキラ光る。

空斗と葵は美男美女のカップルだ。

ずっと前に空斗が金が好きだからっていう理由で染めたというのを聞いた。

おそろいのミサンガなんかつけちゃってさ。

「うちも彼氏ほしーいわ」

「美希作ろうとしたらすぐ出来るやろ」

葵が笑う。くそ経験者め。

生まれたこのかた彼氏が出来たことのない私。

多分、問題は性格。歪んではない、けどさぁ。

いじられキャラっていうのかな。

それに近いっていうのが一つの理由なんやと思う。




「付き合うとしたら誰がいいわけ?」

瑠璃子がポッキー二袋目を開けながら呟く。

奈々がそれ気になるーと、続く。

「せやなー。」

開けられた袋からポッキーを取り出し周りを見渡してみる。

まず端のほうにいる本読んでる男は、むり。

オタクとかきもい、てか話さないし。

あとは女子とは関わらずってかんじで机に固まって話してるヤツら。

女々しい。むり。

となるとやっぱ空斗っちグループになるんだけどさ。




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