にっし

□07/21 中島悠次郎
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五限目前の、20分の昼休み。

いつもみたいに空斗の机に集まった時のこと。

「今日は体育館使えないからだべりましょ!」

と、空斗が女声で言った。

「アタシ恋バナがいいわ!」

なんて龍が続く。龍がちきめえー、なんて大声で笑い飛ばしながら

俺はスリッパの先を床に押し付けた。

恋バナね、と空斗が腕を伸ばす。

「あ、そーいえば空斗はどーなん彼女とさ」

ア、オ、イ、チャ、ン。にやにやしながら笑う玲也。

年頃の男子はやっぱり下品な方向に話を持ってくるわけで。

彼女の居る空斗なんか、恰好の餌なのである。

「あーダメ、まじガードかてぇ」

「ほんまか!意外やなパツキンなのにィ」

「パツキンに染めたのは俺がゆうたからやもん」

パツキン好きなんよね〜と微笑む空斗の頭を

あほか、惚気やがってシネ!と玲也が殴る。

「葵ちゃんカワイイよな、こうちょっとケバいけども」

「ちょ、人の女に手ェだすなよ龍。」

「わかっとるけども!」

龍の言葉の奥に、理沙、りいさを思い出す。

ーウチ、龍が好きかもしれん。

ぐっと拳を握りしめる。

あかん。りいさの決めたこと、や。

と思った瞬間のこと、玲也が思い出したように口を開いた。

「そーいえばさぁ!りいさと悠次郎ってつきあっとん?」

えー!?と空斗と龍が続く。

ずしん、と頭に何かがのしかかった気がした。

付き合っとらんよ、と掠れたような声で返す。





えーでも怪しいよな、何気仲良いし

というかお似合いじゃね?

理沙も可愛いもんなー、顔は

ちょと性格うざ思う時もあるけどな。

でもノーカンするルックスやろ

ーもしかしたら理沙も悠次郎が好きかもやんね





ガン、と机を叩いた。


一瞬で俺の上で繰り広げられていた三人の会話は途切れた。

玲也がバツが悪そうに目を逸らしたのは、

もうどうでもよかった。

「りいさ、好きな人おるんよ」

龍を見て、言った。

龍の目を見て、言った。

ちゃんと声は出なかった。

窓から入る風が俺の髪に触った。

「…だから、そうゆうことは言わんたって。」

理沙のためにも。と、

今度は玲也の目を見て、言った。

「…わり、」

と玲也が小さく謝った。

玲也が悪いわけでもないのに、玲也に当たってる自分が嫌いだった。

無言。空気が、おもい。

「ー…ま、まーまーまー!ね、次の話題ね、いこっか」

空斗がそれを遮るように声を出した。

龍も、玲也も、口を開かなかった。

何か考えているようなかんじだった。






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