にっし

□07/21 山田真綾
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「昨日悠次郎と星見に行った」

「ほんま?どこに?」

「急坂コーエン。」

片方はめたイヤホンを外しながら、理沙が興味なさそうに言う。

…急坂公園。

龍と、礼央の顔が浮かんだ。

「何時くらい?」

「7時くらーい」

9時くらいだったから鉢合わせせんかった。セーフ。

なんて思いながら、イヤホンをはめなおす理沙の横顔を見ていた。

リサが下敷きで仰ぐと蒸し暑い風が吹き込んで来た。

なんとなく龍と同じ塾になったことは、理沙には言わないでおこうと思った。

「ほんとは龍と見に行きたかったんやけどね」

「なにそれ、悠次郎可哀想やんな」

「だってホンマやし?はーあ。奈々みたいに可愛ければなぁ」

「理沙は可愛いと思うけど、」

上を向いた睫毛とか、ぷるぷるの唇とか。

可愛いよ。理沙は。

龍もきっと、理沙のこと気にしてる。

なんて頭の端で思ったけど、言わなかった。

「んでもさぁ、ウチ、奈々みたいに清楚に出来んもんなあ」

「ん。せやな。」

「えっえっ、否定せんの?」

「だってホンマやし?」

オウム返しするみたいにニヤッと笑うと、

理沙は口を大きく開けてうざあーと笑った。

そうそう。作った笑顔より、こっちのほうが可愛い。

「てゆーかアンタ、龍と仲良すぎやろー。」

今日も机くっつけちゃってさぁ、羨ましいわ。

席かわろーよ、ねー。

なんて腕を伸ばしながら理沙がつぶやく。

でも、それがなかったら話さないけどな。なんて。

あ、でも塾一緒になったんやった。

「理科の教科書な、いっつも忘れて来るんよアイツ。」

「そーゆートコ阿呆よなぁ、」

理沙がにひーっと可愛く笑う。






龍がダイチを殴った。なんて話はずっと前に人づてに聞いたことだ。

理沙はその話を聞いて、「ギャップある!超かっけー!」と目を輝かせていたけど、

アタシは信じられないな、としか思わなかった。

ヘタレでいじられキャラでお調子者な、あいつが。

人を殴るなんてありえん。とだけ思った。

実際その時はそのくらいの偏見だった。あまり話さなかったこともあったし。

マネージャーだから多少は話すけども。

結局一週間、停学処分をくらっていたので信じることにはなったのだが。






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