にっし

□07/23 長谷川礼央
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朝は五時起きだった。

母親の作った5日分の荷造りと、

今日の朝飯を持って勢いよく飛び出す。

空が、綺麗だった。

朝焼けというのだろうか。

まじまじと空を見たこともないから、あまりわからないけど。

そういえばずっと前に、あいつも同じ事を言っていた。

ー山田にな、言われてん。

ーあいつ空見んの好きやんか。

ー俺、今まで空なんか見たことなかったから

ーよくわかんないけどさ。

ー悪くないよな。この景色。

龍が二年の地区大会の最初の日に、そう言って淋しく笑ったのを覚えて居る。

大地が投手の大会だった。

龍は、その実力から三塁手だったけど。




…俺は。

前回も、今回もー…





「礼央!おはよ!」

「!」

後ろからの声に反射的に振り返る。

俺より少し低い。んでもってツモより高い声。

ネックウォーマーに顔を半分うずめて。

ワックスとかで整えられてない短い黒髪を揺らして。

一年前とは違って大きい目を輝やかせながら。

龍は俺の後ろで小さく笑った。

「…おはよ」

小さく返すと、ん、と言って地区大会のトーナメント表を見ている。

龍からしたら俺がレギュラーに入れなかったことなんて、

どうでもいいんだろうな。とその横顔を見て思った。

だってみんなに優しい愛されてる龍は。

俺には優しくないから。






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