にっし

□07/19 山田真綾
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岡島龍。オカジマリュウ。

隣の席の、うるさいヤツ。

多分理沙とは釣り合わない。

こんなバカっぽい、(実際にバカ)ヤツ。

理沙が一週間前付き合ってたのは高校生だ。

アタシとは住む世界が違うな、とも思うし、

こんなド田舎でよくぞ、とも思う。

アタシからしたらコウコウセーなんて、雲の上だ。

第一、歳上に知り合いなんて居ない。

でも理沙は違う。理沙は先輩に知り合いがいる。

それもたくさんだ。



予鈴がなった。

理沙はイヤホンを耳から外すと、アタシに渡してニコッと笑い、あんがと、と言った。

この笑顔は可愛いかも、なんて思った。

まあ理沙は可愛いんだけど。少なくとも私よりは。

なんで理沙みたいなんがこんな田舎におるんやろ。

理沙だけじゃなくて、美希ちゃんとか、奈々ちゃんとか。

神様は不公平だ。

イヤホンをしまいながら関係のない神様にあたってみたりする。

「んじゃ、五限目終わったあとね」

理沙は『保険』をかけて、目だけで三ミリくらい笑った。

今の笑顔は、正直あまり好きじゃない。

理沙は『一人になりたくない系女子』だ。

同じグループだった美希ちゃんちにはじかれた時も、

一人になりたくないんだろう。アタシのところに来た。

田舎は田舎でもそりゃそんくらいの人間関係とかはある。

アタシは元々女子より男子と仲良くなるのが上手いので、

言い換えれば女子と仲良くなるのは下手なので、

理沙が五月くらいにアタシのところに来てくれてよかったと思う。

アタシだって『一人になりたくない系女子』なのだ。



膝ちょい下くらいのスカートを掴んで、

ベランダから教室の中に入った。

青い空に入道雲が浮かぶような、暑い夏のことだった。



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