にっし

□07/19 岡島龍
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手を合わせ、お得意のスマイルで可愛く笑う。

「教科書忘れました」

「またかいな」

間髪いれずに小声で答える山田。

正直クラスで一番話す女。

と言っても最近よく話すというだけ。

まあ大体が貶し合いなので、会話は成立しないが。

可愛くはないので普通に会話は出来る。

「だぁから謝っとるやろが、見せたって」

「明日は持ってくるって言ったの誰やったっけ?」

意地悪そうなニヤけ顔を晒しつつ、笑う。

目の上ぎりぎりのぱっつんがうっとおしい。

女はぱっつんを可愛いと勘違いしている気がする。

ガッキーとかがやったら可愛いんやろうけど。

こいつはガッキーじゃないからな。





「知らんそれ俺やない」

目を泳がせておどける。

「あほか」

「お願い!山田!」

机をくっつけると、山田は無言で机の真ん中に教科書を置いた。

「さんきゅー」

小声で耳打ちするも反応なし。

あーつまんね。まあ俺だからってのもあんのか。

空斗とかがやったらやっぱり顔を真っ赤にして照れるのだろうか。

自分で考えといてなんだが、笑ってしまう。

山田が。ぷぷ、

声を押し殺しながら笑うと、やっぱり

隣の席の女はにらみながら教科書を自分の机に寄せた。

そして黒板を真面目な顔でみている。

黒いセミロングはさらさらと揺れてて。

頬杖をつきながら目を細めて。

あー、なんか、久々にこいつの顔凝視したかも。と思う。

俺もノートとろう。

目を黒板に移すと、ノートに理科センの字を写し始めることにした。



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