にっし

□07/19 渡辺理沙
2ページ/4ページ






別に会いたくて震えるわけでもないし、

あの日のように好きだよって言って欲しいわけでもない。

だけど拠り所のようなものがなくなった

ウチの心は、何かに依存しないと生きていけないみたいだ。

すっかりオレンジ色に染まった空を見ながら、つまさきを鳴らした。

ピンク色のラインの入ったスニーカーは、少しきつくなっていた。

帰宅部の面々はもうほとんど帰ってしまっていて、

校舎前でぽつんと立っているのはウチだけ。

一人とかほんま無理なんやけどなぁ。

小さく息を吐く。

どうしようもないこのやるせない気持ちを抑え込む方法は

今はまだここにはないみたいだ。





うるさいくらいに響く蝉の鳴き声とか、

個々に演奏を奏でる吹奏楽部の楽器の音とか、

あいっしゃーす、みたいな挨拶になってない野球部の挨拶とか、

高くて可愛い女テニの掛け声とか、

放課後のすべてがごっちゃになった音が好きだ、と言った

真綾の顔を思い出す。

ふぅん、と返して、そこから話題は広がらなかったけど

この音はウチも好きかな、なんて思う。




.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ