にっし
□07/19 渡辺理沙
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別に会いたくて震えるわけでもないし、
あの日のように好きだよって言って欲しいわけでもない。
だけど拠り所のようなものがなくなった
ウチの心は、何かに依存しないと生きていけないみたいだ。
すっかりオレンジ色に染まった空を見ながら、つまさきを鳴らした。
ピンク色のラインの入ったスニーカーは、少しきつくなっていた。
帰宅部の面々はもうほとんど帰ってしまっていて、
校舎前でぽつんと立っているのはウチだけ。
一人とかほんま無理なんやけどなぁ。
小さく息を吐く。
どうしようもないこのやるせない気持ちを抑え込む方法は
今はまだここにはないみたいだ。
うるさいくらいに響く蝉の鳴き声とか、
個々に演奏を奏でる吹奏楽部の楽器の音とか、
あいっしゃーす、みたいな挨拶になってない野球部の挨拶とか、
高くて可愛い女テニの掛け声とか、
放課後のすべてがごっちゃになった音が好きだ、と言った
真綾の顔を思い出す。
ふぅん、と返して、そこから話題は広がらなかったけど
この音はウチも好きかな、なんて思う。
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