にっし

□07/20 山田真綾
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前の席は浜村淳。

バスケ部だったっていうのは聞いてるけど話したことはない。

その左隣は空いていて、右隣は桃香ちゃん。

たしか彩音と仲が良い。

桃香ちゃんの隣はまほろちゃん。漢字はわからない。

名前が可愛いなあという印象だった。顔はそうでもない。

面々を一瞥しながら、先生が居ないことに今更気づく。

「彩音、先生は?」

「え、先生?いないよ。今日木曜日やろ」

「なにそれ…」

どうやら曜日によって先生がいたりいなかったりするらしい。

なんだそれ。一応新しい生徒来るんやけど。

思うものの、口には出さず、

彩音と少し話しながら地味な筆箱を鞄から取り出した。

その時。ギィイという耳に触る音。

反射的に振り向いてー。

取り出しかけた筆箱を落とした。






ーなんで俺ってサードなんやろ。ー

ー確かにうちの中学の投手は上手いー

ーでもさ、絶対に俺の方が上手いもんー

ーあいつは媚び売るんうまいんや。ー

ー見返したる。だから野球上手い松高に入るんやで。ー






入ってきた影二つを見て、

とりあえずお互い固まる。

片方は長谷川礼央、はせがわれお。野球部。

一瞬驚いた顔をしたあと、やっぱりニヤッと笑いながら

アタシの方を見てきた。

いや、そっちはこの際どうでもいいのだ。

なぜ、なぜ。

ここにあんたがいるんねん。




「おー、山田やーん、うちの塾入るん?」

そこにはヒラヒラと手をふりながら、のんきに笑うヤツが居た。

岡島龍、岡島龍、岡島龍。

アタシはこの塾を選んだ先ほどの自分を呪った。







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