にっし

□07/20 山田真綾
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なんであんたがここにいるのよぉおおおお!

なーんて可愛い漫画みたいな悲鳴は出るはずもない。

自分史上いちばんの睨みをきかせ、

罪はない岡島に当たる。

「あんたが居るからアタシこの塾、はいんないで。」

ひっくい声。可愛くないなぁ。なんて思う。

コンビニのおでんを一口かじると、

岡島は顔をゆがめた。

「え、なにそれ俺のせいなん?」

「ん。教科書忘れ魔と一緒の塾とか嫌やもん」

「そのあだ名嫌やわー!」

笑いながらアタシの隣に座る。

ここでも隣とか。これだったら礼央の隣の方がまだマシ、

ていうか全然いい。





自分でもなんでこんなに岡島に当たってるのかわかんなかった。

理沙の不自然作り笑いとかからくる

よくわかんないイライラをぶつけてるんだと思う。

あかん、なんかごめんなさい。とは思うものの

口には出さずに理科の教科書を開く。

岡島に、当たってしまうのが怖かった。

だから今日でここに来るのはやめようと思った。

「山田、ほんとにやめるん?」

岡島が呟くように話しかけてきた。

「…ん」

下を向いたまま呟いたので、岡島がどんな顔をしているのかは

わかんなかった。

わかんなかったけど、そっか、という声が切なそうに聞こえた。

考えるな、問題に集中しろ。

彩音はアタシをじっと見ていたけど、

しばらくすると問題を解き始めた。






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