にっし
□07/21 山田真綾
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さよならーッ、という空叶のでかい号令が響いたのと同時に、
帰りの会終了のチャイムがなった。
理沙に手を降って、指定の鞄を背負う。
「あーやーね!行こう」
グラウンドに行く前に、四組で止まった。
おっけー!なんて言いながら、短い黒髪を揺らしつつ彩音が走って出てきた。
そしたらもう、全力ダッシュだ。
放課後のグラウンドが好きだ。
部活が始まる前の、夕日に照らされたグラウンドが。
理沙は知らない。このグラウンドがこんなに綺麗なことを。
壊れかけてるボロい部室のノブを掴んで勢いよく開けた。
このノブを回すのにもコツがあって、初心者は簡単に開けられない。
っしゃ、一番乗りやで!なんて彩音は無邪気に笑った。
『地区大会まであと7日!』と書かれたカレンダーをめくる。
「やばい彩音。あと6日やで」
「せや!だから練習あるのみーっ」
夏休みまで、あと2日!なんて付け加えながら、
彩音は部室からボトルを持って外に出て行った。
後を追うように、残りのボトルを持って、扉を開く。
「あーいい空しちょんねー」
空を仰ぐように手を振りかざす。
「そら?」
「ん。ほら、夕焼けがキレーやろ?」
赤く染まった空を指差すと、彩音がおおーっとおおげさに喜ぶ。
「ほんまに真綾は感受性豊かよなあ」
「そ?」
「うん。ほんまにきれー。」
二カッと音がするような笑みで、笑う。
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