うたひめ
□見せてはいけない弱さ
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『…サンジさんあげる』
サ「?ゾロは?」
『…もぅルウさんと飲んでた』
レナが来たのは先ほどコーヒーを作っていたキッチン
さっきまでいなかったサンジを見つけると
二人は自然と横並びに座った
サ「…それはゾロのだから受け取れない」
『…』
サ「…風邪引いちゃうから部屋に戻りな?」
『ううん、サンジさんこそ戻っていいよ』
サ「付き合うよ」
『‥有難う』
サンジは自分の分のコーヒーと
レナが持っていた片方のコーヒーを暖め直して
また席に戻る
カップを両手で持ち
フーフーと冷ましながら少しずつ飲むレナ
その視線はゾロの為に入れたコーヒーカップを見つめていた
サ「女神様、歌って」
急にサンジの口から出た言葉
レナは目を見開いてじっとサンジを見つめると
ふっと笑みを浮かべて
テーブルに置いたカップを両手で包みながら
目を閉じて口を開く
『♪少し温かい風
頬を掠めてく
雲が行く 夏が行く
まだ帰りたくない
触れてくれた理由が聞きたくて聞けない
引寄せられた手
私の髪 触れた指
戸惑いながらももっと貴方を知りたくなる』
サ「綺麗…
その歌は誰に伝えなきゃいけないの?」
『!!……っっ』
サ「…我慢せずに泣けばいい
いっぱい泣けばいい」
抱き締めてくれたサンジが暖かかった
一人で…仲間を作らず孤独に旅をしていた日々
麦藁海賊団と出会い
たくさん笑いあった日々
なによりゾロの存在
ゾロの告白を断っておきながらも
揺れる自分が許せなかった
今までのいろんな感情が頭のなかで蘇り
レナはこの日
一人で旅をして来て
声を出して初めて泣いたのだった