Event 1

□男の背中
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「おい、夏輝と春が説教待ちだぞ。」

「え―――っ? 咲ちゃんは?! 」

「山田さんから遅いの心配して連絡来て
今 迎え来て帰ってった。」

「ぎゃーん、俺の救いがぁぁぁ」

「覚悟して叱られてろ。」


いつもは烏(カラス)の行水なのに、
さっきの『臭い』を気にして念入りに
シャンプーして、体もしっかり2回は
洗ってキッチリドライヤー掛けてトワレ
までぶっ掛けてたら遅くなった。

今日は俺が送って行こうと思ってたのに
…いや、夏輝が譲んないなら送ってく
夏輝の車に同乗してさ。

その為に今日は車で来たけど、
別に置いてったっていーし。


あーあ、帰っちゃったのかぁ…
こんなに盛り上がった後なのに。
山田さんも酷ぇなぁ…っ


そんな事を思ってタンクトップを被って
たら。


「おーおーおー…お盛んなこって。」

「あん?」

「背中の爪痕。」

「マジ?」

「こりゃ夏輝のあの反応仕方ねぇな。」

「…あ――――……。」

「昨夜か?」

「いんや…一昨日…?アレ?昨日か?」

「このケダモノめ。」


「これぞ『男の背中』だろ?」

「間違いなく『水城冬馬の背中』だな」

「…だろ?」



そんなシャワー室にヒヤリと冷気。


「…その穢れた手で咲ちゃんに触る
とか、許す訳無いだろ…?」

「お前は向こう2ヶ月は咲との接触
禁止だ。裸も論外、反省しろ。」

「そっそんなぁああ! 俺の癒しが!」


振り向けば鬼ならぬ仁王サマ2体の
阿吽の図。


「…阿呆が。」


唯一の味方と踏んでた、理解者秋羅の
あっさりとした裏切り。


ズッリぃぞ、秋羅!!


「だってよぉ、横暴じゃね?
何の権限があってそんな…」

「俺は彼女のプロデューサーだからな」

「ウ…ッ」

「…大体お前もそんな姿見られて、
咲ちゃんに『冬馬さん不潔!』って
言われたくないだろ?」

「言うかね、あの咲ちゃんが。」


味方、ってつもりじゃなさそうだけど
一応俺も思った心の声、お前と一致。
流石は心の友よ!


「つか…天使ちゃんにはコレが何の痕か
分かんなかったりして。」

「あり得るな。」

「え、マジで!」


自分で言っておいて何だけど、こんな縦
数本の線なんて他に思いようも無くね?
夏輝ならミィって思わなくも(いやいや
大きさ的に無理だろ)ないかもだけど。


「当たり前だろ!」

「なっちゃん…、
咲ちゃんに夢見過ぎよー?」


そうさせる何かがあの子にはあるけど。
確かに…『女』なのに、天使みたいな
『オンナ』じゃない気配っての?
もしかしたらそれが処女ってコトかも
だけど。でも俺の周りの処女なんて
ソッチにばっか興味津々だったけどな。


「そういうお前こそ『天使ちゃん』って
何だよ! しかも電話帳の登録もソレに
してるだろ。」

「ぎゃ!何で知ってんの、ヤダエッチ」

「お前が彼女にそう言って、彼女が
恥ずかしがって反対すんのに萌え萌えに
なって揶揄ってたんじゃないかっ」

「…あ、そうだっけ?」

「阿呆か」


そんなバカトークをシャワーブースの
熱気ムンムンなトコで繰り広げて。


「もういい、上がろ。」


先にギブしたのは夏輝。
咲ちゃんに関しては異様に沸点低い
からなー、熱くなり過ぎだろって。


でもシャワーブースから1歩踏み出せば
ヒンヤリとした廊下は…スタジオ設置の
高機能クーラーのせいだけじゃなく。

廊下の壁に春サマ。
うおぉ、腕組みして静かに目を閉じて
いらっしゃる…。


「よもや、遊びで咲に手を出す、
なんて事はあるまいが…もしもの時は…
覚悟は決めておけ。」


って、オイ、マジ?
いや春がマジで無い時なんてほぼ見た事
ねぇけど。


ヒュウゥゥゥ…って隙間風?
だとしたらこのスタジオ総工費の割に
手抜き工事じゃね?って思っちまう程の
足元を攫う冷気。

これってやっぱアレだよな。
温度風?

ええ…っ、精神的温度差でも吹くって
初耳なんだけど!

そんな風に内心茶化してたら。



ゾクゾクゾク…ッ


俺の『男の背中』を這い上がる寒気。

いやいやいや、春も夏輝も秋羅も
エスパーかよ!
内心の茶化しなんて気取ってねぇよな?


「おいおい、何だよ背中丸めて。
男の背中が泣いてるぜ?」




秋羅、お前気付いてて言ってんだろ!





男の背中に残った爪痕

残したいのは女かあの子か

こんな俺の背中見て

ちょっとは意識してくれりゃいいのに



…なぁんて計算

メンバーにも
あの子にも


絶対気付かれちゃいねぇだろうけど



俺の罠

俺の背中

俺って男




見てよ、ねぇ。




























end.


Happy Birthday TOHMA MIZUKI♡
2016.09.15 xxx

愛され冬馬さん全開で。



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