Novel


□お姫様と王子様A
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そうやって話しているといつの間にか
沢山の演者の方が来られていて、
舞台袖はちょっと混雑状態。

…そう言えば、JADEの皆さんは
今日の大トリで出演されるはず。
その前に私とのコラボ曲もして
下さるからもう来てもおかしくない。

まだ来られてないのかな?
…いつも皆さんより30分前行動を
されてる夏輝さんは…もしかしたら
そろそろ来られているかもしれない。
思わずスタジオ入口を背伸びして
伺おうとした瞬間、


「お姫様奪還〜っ!」


ガシッと音がしそう、いやしたと思う
くらい大きな硬い体が私をガッチリと
捕獲した。

咄嗟に首を竦めてひゃっとかって変な
声が出ちゃった…と同時に気付いた、
よく知るジャスミン系のユニセックスな
香りと首に触れる髪は冬馬さん。


「…冬馬さんっ?」


大きな体が体重を掛けずに私におぶさる
重くはないんだけど、物凄い圧迫感っ!
周りの皆さんの足が一歩下がってるの
だけが見えた。


「冬馬っ!」


あっこの声、夏輝さん!
周りの足しか見えない私の視界が
くるんっと一回転?したと思ったら
暖かい何かが私を包む。

思わず深呼吸すると仄かな煙草と
優しい柑橘系の香り。


あぁ、夏輝さんだぁ…
と脳まで達した瞬間、抱きしめられてる
様な自分の状況に一瞬で茹で上がる。
私、まるで瞬間湯沸かし器みたいだ…。
もぅ、バクバクドキドキ
耳から心臓が出て来ちゃいそう!

あわあわジタバタ、もう何が何だか
思うように動かない身体を持て余して
いると何か笑ってるような冬馬さんの声
と、また別の声。
秋羅さん? 神堂さん?


「え、あっ…なっ、あっ、しっ
…夏輝さ…!」


ご挨拶しなきゃ!…そう思ったんだけど
全然思うように動いてくれない口。
わ〜んっ!
どんだけパニックになってるの?! 私!


「…咲、落ち着いて。」


笑いを噛み殺しているような普段より
ちょっと籠った神堂さんの声。
少しだけ落ち着こうともう一度深呼吸。
ゆっくりと夏輝さんの香りが肺一杯に
吸い込まれて私の細胞隅々まで
染み込んじゃいそう…。


…って私、変態っぽくない?!
もうヤだーっこんなのくっついてて
気付かれちゃわない??

何をどうしたものか、もうまた既に
頭の中グルグルの私を1回だけ軽く
ギュ…としたような…夏輝さん…。
大丈夫だよ、とでも言うように
優しく背中をさすると私を解放した。

背中に手を添えてくれてるけれど、
腕の中から少しだけ前へ出された私。

囲われてる時はドキドキし過ぎて
スグ放して欲しいような気がしてたのに
今はなんだかとても寂しい感じ。
何だか小さくあ〜ぁ…って思わず
言っちゃいそうになった時、夏輝さんの
声に俯きっぱなしだった顔をあげた。



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