Event 1

□彼女のトモダチ
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どうにか息も整い、料理のオーダーが
通った頃。脱力しながらジンを飲む俺の
携帯にメール着信。


「?」

――あ、初瀬七海って…ななちゃん?


さっき冬馬の携帯からアドレスを通知
したから送って来てくれた模様。


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from: 初瀬七海
title: 本当のお宝映像

さっきはすみませんでした。
もっとお宝 送ります。

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…って、え?
添付画像はムービー。

思わずポチッと再生。
さっきの画像と同じ状態の彼女が映る。


気持ち良さげに眠ってる咲ちゃんの
口元が微かに動く。寝言?

「な…つきさ…」

眠ったままで俺の名を呼んで、本当に
幸せそうに微笑む彼女。

「うわ、ホントに好きなんだねぇ…」

この声はあゆみちゃん?
心底から出た呟きだと分かる声。


不意に食らった、あまりに可愛らしい
彼女の映像に…抑えも効かずに顔に熱が
上がるのが分かる。


「うわーなっちゃん真っ赤!」

「うっ、五月蠅いっ!」

「あー、ヨカッタナー(棒読み)。」

「…今の声、咲、か…。」


メンバーの生ぬるい視線。
どうやっても赤みの引かない俺。


なんだよ! いいだろ、好きな子の
あんな可愛い姿見て自分の名前呼ばれて
無意識なのにそんな好かれてるの全開で
表されて、嬉しくて仕方ないのなんて…


当たり前だろ!





――ああ、もう咲ちゃん。


君に逢いたくて仕方ない。
あんな無防備な顔して、俺の名前呼んで
…親友たちにもバレバレなくらい俺を
好きだってダダ漏れで。


そんなの見せられて、君にメロメロな
俺が平気な筈が無いだろう?




きっとこの先、俺は何万回もこの映像を
繰り返し見るのだろう。



君を想い、

君に逢いたくなった時



何度も。




どんなに落ち込んでたって
どんなに嫌な事があったって



この映像があれば百人力。





本当に『本当のお宝映像』だ。



ななちゃん、ありがとう。
あゆみちゃんもありがとう。
この映像と、あの呟きは本当の彼女の
心を一瞬で切り取ったもの。

親友の君たちしか撮れない映像。



この映像を撮ってくれてありがとう。

この映像を送ってくれてありがとう。



彼女の、傍に居てくれてありがとう。


彼女の大事な友達。
彼女を支えてくれる大事な人たち。


どうか、これからも宜しく。



彼女と

俺の

この先を

どうかずっと見守ってて?









end.

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