Event 1

□make SURE
3ページ/6ページ



「な、何かモモちゃんいつもと違う…」

「……そう?」

「う、うん…。なんか、その、緊張する
って言うか、あの、なんか、こう…」

「ふふ、意識、しちゃう?」


流し眼で怪しく微笑(わら)うモモちゃん
…その様は、その、色気と言うか男の人
っぽいって言うか、ってモモちゃんが
男の人なのは元々なんだけど…っ


「…え、あの…っ」


何て応えたらいいのか、どう言えば一番
しっくりいくのか、言葉が浮かばなくて
自分でもあまりの挙動不審に困り果て。

無意識にモモちゃんに助けを求める様に
とほほ顔で見上げて。

そしたら


「ふふ、今はコレくらいにして
あげよーかなぁっ」


って、明るい…いつものモモちゃんの
笑顔が私の肩を抱いた。

その声のトーンと雰囲気にホッとして。
肩の力がふしゅ〜…って抜けた途端。


「…やっぱ止めるのやめた。」


そう言ったモモちゃんがグッと肩にした
手に力を込め、抱き寄せる。
モモちゃんのイイ匂いのする胸板に。

そして抱き込んだ私の耳元で低い声。


「このマグカップ、お揃いで使おっか。
…何処で使う? 咲ちゃんの部屋?
それともアタシの部屋?」

「へ…?」


――え、な、何? どう言う事?


「ね、どっちがいい?」

「え、でもコレ、私モモちゃんの誕生日
プレゼントのつもりで…。」

「うん。アタシに使って欲しくて選んで
くれたんでしょ?」

「う、うん…でもモモちゃんが自分で
買っちゃったから、あのマグカップは
プレゼントになんな…」

「うん、そうね? じゃあねぇ…アタシ
咲ちゃんから一緒に使ってくれる
っていう約束が欲しいかなぁなんて。」

「へぁ?! 一緒に使う約束…?
そ、そんなのがプレゼントになるの?」

「なるなる!…それが今アタシが一番
欲しい物かもしれないくらいよ。」

「え、じゃあ…約束、するね…?」

「……ホント? 後悔しない?」

「こ、後悔?? …マ、マグカップに
何か特別な意味でもあるの…?」

「んー、マグカップに、じゃなくて。
『一緒に使う』コトにかな? …で、
コレ何処で使う? 咲ちゃん家?
それともアタシん家?」

「へっ?! …え、それはモモちゃんが
使いたい場所で使えばいいんじゃ…」

「咲ちゃんの希望は?
何処で使って欲しい?」

「え、と…? じゃ、じゃあ、たくさん
使って欲しいから、モモちゃん家…?」

「『沢山使って』ね。OK、じゃあ早速
今日から使うね。(って言っても使うの
朝だけど)」

「え?」

「ん〜ん、何でも無い。」


そう言ってニッコリ笑ったモモちゃんは
本当に上機嫌で。最後の言葉が聞き取れ
なくて訊き返した私に何も答えてくれず
ニコニコ。

…私は訳も分からず、でもモモちゃんが
喜んでくれたからいっか、なんて思って

そうしてる間に小さな疑問なんて吹飛ん
じゃう様なアフタヌーンティーセットが
運ばれて来て。

私は目先の豪華さに目を奪われ、もう
すっかりそんな小さな疑問は頭に無く。


まさか、それが…こういう意味だった
なんて身を持って知ったのは翌日の朝。


もう、こんなのモモちゃんの策略としか
思えない…。


だって、
だって、

まさか、でしょ?



ねぇモモちゃん、何時からこんな事
計画してたの。



…もうっ!





*
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ