Event 1

□アトノマツリ
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『…おい、冬馬…?』

「…っ、でっ秋羅っ彼女今何処だよ!
咲ちゃんっ! 俺が行くからっ」

『ハァ?! お前が行くって彼女実家…』

「ヨシ分かった、家だな?! 」

『あ、バカちょっと待――』
ブツッ、プ――プ――プ――……


速攻でタク止めて家戻って…っつっても
マンションの部屋にゃ入らず、駐車場
から車出して。

電源ごとオフにしてた電話立ち上げ
彼女にTEL。


TRRR…RRRR…TRRR…

『は、はい…っ、冬馬さん…っ?! 』


3コールで出たのは愛しい姫。
今夜俺の誕生日祝ってくれるって言う…


「咲ちゃん今何処?」

『えっ、あの、家ですけど…』

「今から行くから…んと15分後?
下に下りてて。」

『えっ、あのっ、さっき秋羅さんからも
お電話頂いて…っあの、冬馬さんが…
その、普通の状態じゃないから直接は
会わないようにって…あの、もしかして
酔ってます…?』

「あのヤロウ…。…大丈夫だから。
俺今シラフ。一滴もまだ酒飲んでません
だから車だし。…信じて?」

『え、えっと、…はい。
あの、私も渡したい物があって…。』


――キタ――――! 手作りケーキ!
俺の、俺だけの!


「うん。楽しみにしてる。じゃ後でね」


もう嬉しくて嬉しくて。
だから言ったんだ上機嫌で。
もう隠しようも無い程の満面の笑みで。

まぁ電話だから彼女にゃ見えて無いとは
思うけど、でも音楽に携わる子だから
多分声のトーンとかで判ってる筈。

彼女の声も何処か明るくて、俺はもう
ウキウキと車を走らせた。

そう、まずは去年の事…謝んなきゃ
いけなかったのも忘れてさ。


何度か、彼女を送る夏輝の車に同乗した
事がある。だから彼女ん家もその道順も
バッチリ。春ん実家の近くだしな。


俺は基本、仕事場に車乗ってかないから
俺が彼女を送った事はあんま無い。

遅刻魔の俺を起こす係になっちまってる
秋羅の迎えでスタジオに行く事が殆ど。

最初はリーダーの夏輝が俺の朝起こし係
だったんだけど、あいつっていっつも
30分前行動だからさ。まだ眠れる時間
たっぷりあんのに無理矢理起こされて
引き摺って行かれる俺の身になれって
直談判したトコロこうなった。

迷惑そうな秋羅。

でも実際前日一緒に飲んでる事も多くて
事情もよぅっく知ってるから適任って
事になって秋羅も渋々納得したようだ。

まぁそんなこんなで、俺の車は主に休み
の日の遊びメイン。女の子とドライブ
したり、デートしたり、チョメチョメ
したり。そんなんばっか。


って、やべぇ!
そうだ、後部座席のゴミ箱っ!

彼女迎える前にダッシュでコンビニの
ゴミ箱に車のゴミ捨てに行って。

そんでそのコンビニで思い付いて慌てて
買ったファブ○ーズでシュッシュして。

ついでにシートにコロコロ掛けて全部
綺麗に。


――…何で俺こんなに焦ってこんなコト
してんの…?

そう思わなくも無かったけど、でも、
今からあの咲ちゃん乗せんのに色々
そのままなのもどうかと思うし。


…ってそもそも乗ってくれんの?
なんて一瞬過ぎったけど、いやいやいや
そこはこう、憂鬱菌は吹っ飛ばして
俺らしく前向きに。

そう、秋羅にあんなこと吹き込まれて、
彼女がケーキだけハイって渡して、
そのまま「じゃあ…」って事だってある
かも…なんて想像出来ちゃったのは、
無理矢理頭から追い出して。


俺の誕生日。
祝ってくれる彼女攫ってドライブ。

そう、念願の手作りケーキ貰って、
可愛いあの子助手席に乗せて。


何処連れてこ?
時間も遅いし、海はどう?
それとも山のドライブウェイかっ飛ばし
夜景でも?


そう思って。




*
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