Novel


□お姫様と王子様A
1ページ/6ページ

【 お姫様と王子様A 】

咲 side


「おはようございます!」


笑顔と挨拶、これ基本。
芸能人になりたての私。

たまたま神堂さんが私の声を
気に入ってくださったお陰で、
デビューからお仕事に恵まれて、
早2年。
今日も大きな年末の歌番組に
出演が決まっていた。

山田さんに教えてもらった通り、
笑顔を絶やさず、明るく挨拶。
中には、気難しかったり
…ちょっとビックリするくらい
ボディタッチの多い人もいたりして
…時々笑顔が固まりそうになる
こともあるけど…うん、大丈夫。

今日の番組のプロデューサーさんへの
ご挨拶はさっき山田さんと済ませて、
段取りも確認済み。

後の細かな変更や確認を
山田さんがしに行ってくれている。
山田さんが戻ってくるリハ前まで
私はココで、今からご一緒する
他の演者さんやスタッフさんへご挨拶。

小さな事からコツコツと!
これも山田さんから口酸っぱく
教えられた鉄則。

早目に現場入りして、スタッフさんや
演者さん、本日MCの宇治抹茶の
慎之介さんと松田さんにももちろん!


「おはようございます!
松田さん、慎之介さん!
今日はよろしくお願いします。」

「おぉ、咲ちゃん。
おはよーさん。自分、元気やなぁ」

「おはようさん♪ 咲ちゃん、
なんやー慎ちゃんって言うてって
いうたやん〜」

「お前、そないな事言うとったんか!
で、『一条さん』からの『慎之介さん』
かいな…一瞬、聞き間違えかと思たわ。
咲ちゃん気ぃつけや?
あかんで? こないな奴信用したら、
あっちゅー間に連れ込まれんで」

「おいおい、隆やんそらないわ!
俺紳士やろ?…なぁ咲ちゃん?
優しいやんな? 俺」


「うふふ、お二人はいつも仲がいいん
ですね。私、お二人とお話ししてると
緊張が解れてリラックスしてお仕事も
楽しく過ごせてて…いつもほんとに
ありがとうございます」


お二人は、流石お話のプロだけあって、
すぐ流れるようなテンポで楽しい会話を
して下さって。いつも本番前に
緊張しいの私を笑わせてリラックス
させてくれる。
もちろん、普段から楽しい方々だから
なんだけど。


「やーもう、可愛えぇなぁ咲ちゃん。
俺、隆やんより咲ちゃんともっと
仲良うなりたいねんて〜」

「そら誰かてそうやわ!
何が哀しゅうて可愛い娘ぉを目の前に、
おっさんと仲良うせんならんねん!
…つか、お前ツッコミやろ、
なんで俺にツッコまれとんねん。
仕事せぇ、仕事。」



「宇治さーん、
打ち合わせいいっスかぁ?」


「ほいほーい!
あーごめん、堪忍な〜咲ちゃん。
…宇治さんはやめてやー
抹茶さんはどっちやのん」

「ほな後でな?咲ちゃん。
JADEさんとのコラボもあのCMの曲も
楽しみにしてんで。頑張りや?
俺、好きやねん、あの曲。」

「あっ隆やん何抜け駆けしとんねん!
俺かてあのCM好きや言うてるやん!」



「宇治さぁーんっ!」

「ほいほいほーいっ!」


お二人は手をヒラヒラ振って
スタッフさんの所へ慌てて駆けつけて
行った。…ほんと楽しい方たち。

私はすっかり解れた緊張を笑顔に変えて
大道具さんが走り回る今日の舞台へと
目を向ける。



*
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ