Event 1

□彼女のトモダチ
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【 彼女のトモダチ 】



「なぁーんだよ、
なっちゃん元気ねぇなぁ!」


本日の仕事を終え、出したままになって
いたギターをメンテしてから仕舞う。
一連の日々の流れ作業を終え、小さな
溜息。

無意識に何度も吐いていたのか、それを
見咎めた冬馬がポンと肩を叩いて来る。


あ、面倒臭っ。

確実に絡まれるきっかけを作った自分に
更に溜息を吐きながら、手早く手荷物を
纏めていく。

すると逃がさねぇぞ、とでも言うように
反対側からゆったりと近づいて来る、
悪代官・秋羅。

明らかに悪そうな顔して笑ってる。
これは、絡む気満々って顔だよな。
また、溜息。


「愛しの咲ちゃんが夏輝を置いて
デートに行っちゃったんだよな?」

「えっ何ナニ?浮気?」

「な訳ないだろ!」


知ってるくせして面白がってちょっかい
掛けてくる。そんな悪友どもを無視して
黙々と片付けて。




――今日は咲ちゃんは半オフ。


こないだのオフの日に。
七海ちゃんから連絡を貰った彼女は俺の
部屋の俺の横で、親友たちとの久々の
女子会計画にウキウキとスケジュールの
相談をし合っていた。


「行ってきてもいいですか?」


首を傾げて俺を見上げるその様は、俺が
最も弱いと自覚する、彼女の無意識の
おねだりポーズで。

もちろん、彼女の親友たちとの逢瀬すら
反対するような拘束癖は無いんだけど。
一つだけ引っかかってるのは、別に以前
あゆみちゃんが咲を元彼と復縁を
させるべく暗躍してた事とかじゃ無くて
(詳細は Novel【アマデウス】参照)
ただ…俺だけがまだ、彼女の親友たちに
一度も面識が無いってこと。
いや、だから反対って訳じゃ無くて。

秋羅と冬馬なんて、あゆみちゃんとは
2回も食事をしてるのに。
俺は七海ちゃんとは1度、いや2度か…
だけ電話で話した事があるだけで。

…だから。


「もちろん。楽しんどいで。
…機会があれば俺も2人に会いたいから
そう伝えといて?」

「はい!」


なるべくさり気無く、それだけ伝えて。
ニコニコと上機嫌にココアを飲む彼女に
キスをした。

その後は甘い甘い彼女とのキスを堪能し
俺達のオフは甘く熱く過ぎたのだった。


あれから約10日。
多忙を極める彼女はあれから全くオフも
無く、漸く入った今日の半日オフも例の
女子会の為、俺との逢瀬は叶わなくて。
しかもこんな時に限って、仕事の方でも
彼女とは全く絡みも無くって。

でも俺は、折角彼女が楽しみにしていた
女子会なのに反古にさせるなんて事も
出来なくて。また更に1週間近くは空く
だろう先のオフまで彼女に逢えない禁断
症状と戦わなくてはいけなかった。


溜息。



「なぁんだよーなっちゃん、
寂しいんなら相手しちゃるよ?」

「イラナイ。」

「うわ、つれないなぁ。」

「まぁそう言わず、今夜は行こうや。
彼女が女子会じゃ特に用も無いだろ?」

「……。」

「何がそんな不服よ?
可愛子ちゃん呼んじゃろか?」

「もっと要らない。」

「去勢されちまったかぁ?」

「やめとけ、冬馬。夏輝ばかりか
春まで敵に回す事になるぞ。」

「えっ?…うわ…。」

「まぁ冬馬の奴の冗談はさておき、
久々に男同士の交流でも深めるか?
なぁ、春?」

「…たまの事だ。いいだろう。」

「春も行くんなら、行くよ。」

「なぁんだよーメンバー愛は?! 」

「お前の酒癖をよぅっく知ってるから
嫌だっつってんだろ!」

「へいへいへい。」

「うわ、何この反省ゼロ感っ」

「奴に反省を求める事が
そもそもの間違いだ。」

「なる…。」

「よーっしゃじゃあ今日は
俺たち、男子会って事で!」

「…何かヤな予感しかしないのって
俺の気のせいか?」

「同感だ。」


肩を組まれ、まるで拉致でもされるかの
ようにスタジオから連れ出され。
いつの間に呼んだんだか、タクシーに
乗せられる俺たち。

そうして、若干2人の溜息と共にJADE
総出の男子会は急遽決定したのだった。



*
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