Event 1

□キラキラキラ
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【 キラキラキラ 】


神堂さんにプロデュースして頂いて。
それだけでも恐れ多いのにどうしてだか
私を気に入って頂き、コラボまでして
頂いて。

世間では、今まであり得なかったこの
状況に神堂さんと私の間にプロデュース
以上のものがあるのではないかととある
週刊誌から噂が出だして。

神堂さんは「気にする事は無い」って
仰って下さったけれど、両事務所から
したらそうもいかなくて。

私の事務所はもちろん、神堂さんの方の
事務所も新たな一面と言うので注目を
浴びていて、しかも話題だけでなく現在
売れ行きも好調だから、お仕事としては
波に乗って来ている今、コラボを解消
したり、プロデュースを止めるなんて
言うのは無いみたいだけど、ゴシップを
意識した質問があり得る生放送や、記者
などを締め出せない大きなライブなどは
自粛せざるを得なくて。

今は収録の歌番組や、プロモーションの
撮影、他は後で差し替え編集も可能な
雑誌取材のみが許され、活動としては
停滞している日々。

でも皮肉にも、その露出を控えた事が
却って人気を煽り大手CDショップ主催
シークレットライブのチケットがネット
最高額のプレミアが付いてたり、私達の
知らない所で凄い過熱現象が起きている
らしくって。

熱狂的ファンとか言うストーカー紛いの
おっかけさんまで出だして、駆け出しの
私にまでボディガードさんが付いた。

ボディガードの澤田さんは男性なのに
線が細くて、女装も似合っちゃうような
ちょっと変わったボディガードさん。

本来は女性には女性ボディガードさんを
お願いするのだけれど、おっかけさんが
男性(しかも複数)と言う事もあり、今回
澤田さんが抜擢されたらしい。

私に付いて以降、澤田さんはずっと女装
姿で、公には山田さんの片腕の新しい
マネージャーさんとなっている。

神堂さんにもJADEの皆さんにも、勿論
その他の芸能人のお友達にも澤田さんは
女性と言う事になっていて、ストーカー
対策としてずっと傍に付いていて貰って
いるとだけ説明していた。
こういう周りへの警戒を示す事で被害を
抑えられるのだと説明も受けている。

芸能人のように公人に対するストーカー
被害って言うのは犯人を捕まえても、
ハッキリ言ってキリが無いから、犯罪に
なる前に抑止する事が第一なのだとか。

…と言う訳で、澤田さんと私は暫くの間
行動は一緒にする予定となっている。


澤田さんは寡黙で、普段余り話さない。
というのもプロだけあって声は作ってて
そんな簡単に男性だとは分からないけど
一応念のため言葉数は多くはしたくない
のだと初日に言われていて。

…でも正直言って毎日ずっと一緒に居る
ものだから、つい話しかけてしまって…
最初は毎回眉間に皺を寄せられては反省
の繰り返しだったけど、最近は諦められ
たのか、簡単な会話には応じてくれる様
になってきていた。


朝、今日の予定を事務所で確認。
山田さんから昨日も帰り際に確認した
スケジュールを説明され、自分なりにも
スマホメモに書き込み、頭にも入れる。
傍では澤田さんがしっかりと手帳に書き
3人でスケジュールを共有していく。


「…今日明日の2日は久々にJADEとの
コラボの音合わせだ。ストーカー的には
一番の狙い目になるだろう。くれぐれも
羽目を外す事の無いように。」

「はいっ」

「澤田さんの事は、まだ新マネージャー
としてしか説明してはいないが、緊急時
などに備えてJADEメンバーには言って
おいた方がいいかと思うんだが…。」

「その方たちは信用出来るのですか?」

「もちろんです!」

「…いや、貴女は少々人を信用し易く
参考にならないので、山田さんに。」

「…そうですね、今回の騒ぎの両端です
から、疑わしい事は無いかと。」

「分かりました。それならば私はどちら
でも結構です。」

「では後で私が立ち寄った際に説明も
兼ねて改めてご紹介しましょう。少し
記事も落ち着いて来たこれからはコラボ
機会も増えて来る一方になりますから」

「分かりました。」


硬苦しい山田さんと澤田さんの会話。
山田さんが出て行った後、私は残った
澤田さんに聞く。


「澤田さん、私そんなに信用しやすくて
参考になりませんか…?」

「まさか自覚が無いの?」

「う…。」


澤田さんは私と話すようになってくれて
からはオネエ言葉みたいではあるけれど
少し砕けた口調で話してくれる。
あまり硬い話し方だと私が萎縮しちゃう
から…そうしてくれたみたい。

でもだからって、言う事は変わらずに
手厳しいのだけれどそれは私を守ろうと
して下さってるからで。

そう、そんなこんなで、ちょっと奇妙な
関係だけれど、私は澤田さんと信頼関係
って言うのが出来て来ていた。





***


「おはようございます!」

「おー!来た来た〜咲ちゃん!」

「久しぶり。…大変だったみたいだね?
大丈夫? 怖い思いはして無い?」

「はい!冬馬さん、夏輝さん本当に
お久しぶりです。えと、丸々1ヶ月ぶり
くらいですか?」

「気分的にはもう何ヶ月も逢えてない
みたいだよ〜! あーもう久々に見ると
やっぱ可愛いなぁウチの姫は!」


そう言っていつものようにハグしようと
する冬馬さんを、澤田さんがスッと出て
来てクールに制した。


「何、このでっかい姉ちゃん。」

「あ、あの…っ。」

「あ、前に山田さんが言ってた新しい
マネージャーさん?」

「は、はいっ」

「…澤田です。宜しくお願いします。」

「…声、太くね?」

「こら!冬馬!」

「あっ、あの!」

「…すみません。
ウチの馬鹿が失礼な事を。」

「いえ、慣れてますので。」

「「「……。」」」


JADEの皆さんvs澤田さんで、なんだか
微妙な雰囲気で。
私はあわあわと慌てるばかり。

さっきから遠巻きに見ていた秋羅さんが
先に、フッと笑いを漏らした。


「何にしても、大事な秘蔵っ子に勝手に
ハグする大男はマネージャーさんからは
要注意人物だよなぁ?…今までよくまぁ
山田さんが黙っててくれたもんだ。」

「…流石に冬馬も山田さんの前じゃ
ハグしてないだろ?」

「あ、そうなんですか?」

「えー?どうだっけなー?」

「確信犯め。」

「で、その新マネさんは咲ちゃんに
今日はずっと付きっきりな訳?」

「あ、はい。…あの暫くはずっと一緒に
行動する事になるかと…。」

「え――――!」

「こら!冬馬っ!」



「…何の騒ぎだ。」

「春。」

「神堂さん!おはようございます!」

「ああ。もう来てたのか。
…君が来ると冬馬が一段と煩くなるな」

「ちょ、春サマ?! 」

「…こちらは?」

「あ、あの、澤田さんです。」

「ああ、山田さんが言っていた。」

「は、はい…。」

「澤田です。」

「……。」


ジッとあの透明な視線で…澤田さんを
見つめる神堂さん。

え、あ、部外者だと思って…?


「あ、あの、神堂さん…っ実は…」

「男か。」

「「っ!」」


驚いたのは私たち2人。

驚くべき事に、JADEの皆さんは薄々
感じていらっしゃったのか、皆さんの
口からは「あー。」とか「やっぱり?」
の声。



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