Event 1

□美しき獣
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【 美しき獣 】



(ピピッ)パッ!

ふあ…ぁ…。

…おきなきゃ…


ゴソリ…


枕の下にセットしていた携帯のアラーム

私よりも電子音に敏感な京介くんまで
起こしてしまわない様に考えた苦肉の策
なのだけれど、それでもやっぱり時々は
敏感にも起きてしまう彼を、そっと仰ぎ
見る。

私を大事そうに腕枕して眠ってる
京介くんを。


――良かった。起こしてない。

昨日は…遅かったから。
私は昨日半オフでたっぷりお昼寝してた
から、大丈夫。…その、夜に備えて。

だっだって、昨日は朝から京介くんに
そう言われてて。

『明日は久々に揃ってオフなんだから、
覚悟してて?…今日はちゃんとお昼寝
しとく事。でないと明日は夜まで2人で
寝倒しちゃうよ?』

だなんて。
私はもう朝から真っ赤になってしまって
午前中の仕事から帰ったらスグに用事を
済ませ、明日の準備も早々に京介くんが
帰って来るまでたっぷり『お昼寝』を
したのだった。

それからは…一緒にお夕飯を食べて、
それこそ夜通し。

もう一緒に住んでいるから、彼の大切な
誕生日は夜中じゃ無くて、当日のお昼に
一緒に祝おうっていうのは前から約束
してて。

だから昨日の夜、12時になった瞬間には
ケーキは無くて、2人でベッドの中。

そ、それこそ、つ、繋がりあった状態で
言葉と、その…私がプレゼント…な感じ
でお祝いして。
そっそれが京介くんの希望だったから!


だから…今朝は彼に内緒で早く起きて、
久々に2人で食べる昼食は豪華にして。
昨日スポンジだけは作ってたケーキも
今からデコレーション。うふふ。

京介くん喜んでくれるかな。

お昼にお祝いって約束した時点で、もう
ある程度予想されているとは思うんだ。


でも、それでも喜んでくれる?


人気のお店に予約も考えたんだけど、
京介くんと私じゃ何処へ行っても…
やっぱりゆっくりは出来ないから。


彼の好きな物を沢山用意して。
昨夜はハッキリ言って今日のこのご馳走
の余りで作った有り合わせの夕食。

それでも彼は美味しいと言って喜んで
くれていたけれど。

本当に彼に食べさせたかったのは、
今日のこの料理。

彼の好きな物ばかり。
彼が一度食べて、リクエストしてくれた
ものばかり。それを少しアレンジして。

…ちょっと多過ぎたかな…。

お夕食も同じのじゃあんまりだから
彼の希望を聞いて献立を考えるつもり
なんだけど。

…残しちゃっても明日の朝食とか、
私のご飯にしちゃえばいいよね。


そう思って広めのキッチンを動き回って

ケーキは真っ先に仕上げて冷蔵庫へと
直して。煮物を温めて、サラダを和えて

意外に和食も好きな京介くん。

でもハンバーグとかオムライスとかも
大好きだから、夕ご飯はそのどっちか
かな? 簡単な料理だから、京介くんの
意見聞いて、OKなら一緒に作るのも
楽しそう。

そんな事を考えて、気が付けば鼻歌も
出ちゃってて。


「上機嫌だね?」
「ひゃ!」




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