Event 1

□Revenge
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【 Revenge 】
(リべンジ:雪辱を果たす)


…ちくしょ…。

昨日はアイツのロケの最終日で、俺は
今日から来なくなるアイツに、今夜の
誘いを持ちかけようとしたんだ。

今夜は知り合いのクラブでヤる事に
なってたから。
前に一度アイツを連れて行った事のある
芸能人御用達のクラブ。
俺もたまに趣味のDJとして出ている
そのハコ(会場)は、小さなハコの割に
中々のグレードで。しかもあのクラブは
一般には知られてなくて…でも知ってる
やつは知ってるってヤツで。

今までそんな世界とは無縁だったらしい
アイツはクラブの喧騒と光の渦に目を
白黒させていて。

――お前やJADEのLIVEのがずっと派手
だろってのに。

でもそんなトコがまたアイツらしくて。
俺はあの日、アイツのキョロキョロと
落ち着きなく周りを見回す様すらも
可愛くて、唯でさえアイツに嵌まってる
って自覚あるってぇのに更にズッポリ。

だってアイツあんな可愛さそのままで
クラブなんて飢えた男だらけの場所で
あの無防備な状態で居やがって、俺の
嫉妬や独占欲なんてのを嫌ってほど煽り
やがるから。コレがいっそ計算尽くって
んなら俺だって抵抗しようがあるって
のに、全部天然だってんだから、もう
どうしようもねぇだろ。

キューピッドの矢が刺さりでもしたかの
様にアイツん事想えば胸は痛むし無駄に
心拍数は乱れ…何だよ、結構な重症じゃ
ねぇか。ちくしょう…

それなのに劇的に鈍いアイツは…全然
そんなの気付きやしねぇ。

だから昨日も今日の予定を訊く俺に、
トンチンカンな仕事の予定やこれからの
ドラマでの目標だなんて目をキラキラ
させて語りやがって。

俺が訊きたいのは翌日のお前の予定だ
っつの。そりゃお前との未来予想図も
その内2人で語れたらって思うけどよ。

…でもそれには先ずデートだろ。

まだまだガキなお前に合わせてやってん
だから、俺の思うままにエスコートされ
とけよ。

事、色恋に関しては器用になれない俺は
お前を泣かすかもしんねぇけど、絶対
誰よりも大事にするから。

そんで最後には絶対俺で良かったって
思わせてやるから。

だからこの手を取りやがれ。


――なぁ、咲。

俺にしとけよ。
お前の周りにいる派手な連中より、
大人で落ち着いた遊びのねぇ相馬さん
よりずっとお前を伸ばし、楽しませ、
一緒に伸びて行く俺の方がお前とこの先
永く手に手を取って行ける筈だろ?

お前と一緒なら俺も何処までも伸びて
行ける、そんな気がしてんだ。

先輩俳優の背中を追うばかりでなく、
お前に背を追われる事で俺は絶対この先
怯まないし、立ち止まらない、って…
そう思えるから。




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