Event 1

□アトノマツリ
1ページ/8ページ

【 アトノマツリ 】


今年の誕生日。
俺はいつもと変わらず、目的も無く
夜の街をふらり。

これには理由があって。


毎年、遊び仲間が多い俺はクラブ貸切り
パーティとかそんなんで祝って貰って
ガンガンに遊んで終了。

その辺のホテルの一室で、貰ったモンと
お持ち帰りした女の子がベッドや床に
散乱した状態で、大概翌朝なっちゃんの
起きろコールで起こされて秋羅に回収
されて…ってのが毎年恒例。

誕生日の翌日フツー仕事は休みでしょ?

そう言ってやりたいけど、ハメ外し捲る
俺に翌日休みなんて危険な餌を与えるな
とは事務所命令。

ほんでリーダーのなっちゃんが嫌々その
任務をこなしてる次第ってワケ。

ホント、うちの事務所シツレーにも程が
あるだろ?


ああ、話が逸れた。


そんなんだから、ホントは今から会場の
クラブに行かなきゃなんだ。

秋羅から伝言貰ってっし。
マサヨちゃんレイちゃんミナミちゃん
そしてユカイな仲間たち。
皆が俺を待っててくれてる。
今年は、良く行ってたガールズバーで。


騒ぐの好きだし
酒好きだし
甘いもんも好き

ほんで女の子なんか大好物

優しくて
柔らかくて
イイ匂いで

それにホラ、キモチイイじゃん?


だから、こんな誕生日なんて俺様主役で
チヤホヤされて楽しい事ばっかだからさ

いつもの如く

その場限りの楽しさで
ヤリっ放しの快楽で

そんでまた今年の歳を彩って。


そう思うのに

何でこんな憂鬱?


宛て無くふらふら
庭みたいな夜の街。


「はぁ…」


理由、判ってんだ。
判り切ってる。

きっかけは去年の事。
そ、去年から引き摺って、今年の憂鬱。


去年…いんや一昨年の年末からあの子…
咲ちゃんが春にプロデュースされて
JADEスタジオに来てるんだ。

めっちゃイイ子でさ。
俺ら皆のお気に入り。

見た目もキュート、でもそれ以上に
その才能・性格・料理の腕も極上でさ

そんなあの子も俺らに懐いてて
何かっちゃあ、差しいれと称して色々
作って来ちまうんだ。

弟と作ったクッキーとか
勿論バレンタインもみんな貰った手作り
チョコケーキ。

んで、6月の夏輝の誕生日にケーキ。

だから、アレ?
なっちゃんにしちゃ手ぇ早かったなー
なんて思ってて。

でもそれにしちゃ、スタジオにケーキ
持って来ちゃってるし、その後も2人
仲イイけど…なんつーの?
ラブってる感じじゃ無い。

きゃっきゃっきゃっきゃしてっけど
こう、なんつーか、性的な感じゼロ。

…あれれ?
なんて思ってる内に、11月。
7日に春の誕生日、11日に秋羅ん誕生日
両方ともケーキ作って来てさ。

コレって、そう言う意味のケーキじゃ
無かったの?

『大好きな彼』用のケーキなんかじゃ
無かった?



あれれれれ…?



ねぇ、俺には?
俺、9月なんだけど。


そう思ったけど、何かソレ言うのも
ちょっとカッコ悪い気がして。

しかも何か含みあんのかなーと思ったら
彼女全然天然炸裂。


…もしかして、俺の誕生日知らない?

俺のだけ、知らないの?


なんて思ったら

すっかりバースデーブルー。



あーあ…今夜どうすっかなぁ…。

なんて。




*
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ