Event 1

□立待月
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【 立待月(たちまちづき=十七夜) 】


今年のスーパームーンは仲秋の名月の
翌日で。唯でさえ大きな月がより大きく
輝いていた。

普段、俺はけして風流な趣味なんざ全く
持ち合せちゃいねぇ。

まぁ月見酒と洒落込む事くらいはあるが
正直言や、別に月がどうとかそんなもん
特に興味も無い。

…まぁ中高生時代に少しばかし天体に
興味を持った時代があった程度だ。


そんな俺が今年は仲秋の名月に月見をし
翌日のスーパームーンなんてもんまで
高層階のマンションの窓を通して見てた
なんざ…誰が想像出来ただろう。

しかも愛しい女を腕に抱き。


その女はついさっきまで俺の下で最高に
輝いて…その白いカラダに月光を纏って
反り返り、甘い声で達しながら俺を締め
付け…果てた。

今は俺の腕ん中スヤスヤと、かぐや姫も
かくやと言わんばかりに清らかな顔で
寝入っちまってる。


――愛しい女。




「秋羅さん! 今日は仲秋の名月だって
聞いてお団子作って来ちゃいました!」


そんな、お前の笑顔こそが真ん丸でその
頬だってプニプニで団子みたいだろ、
なんて軽口を返し、それで拗ねてもっと
団子みたいんなったお前に笑って。

団子だけじゃ飽き足らず、遅かった仕事
帰りだっつのに重箱までこさえて来た
オフ前日のお前。

もうすっかり俺らの事は家族も公認で、
休みの前日には殆ど俺ん家に泊まりに
来てるこの関係。

仕事のある日は俺がこいつの実家に顔を
出し、晩飯を頂くなんてのもザラにあり
…いつお前を攫おうか計画中。


そんなお前がネギ背負ったカモみたいに
団子持って俺んとこ来て、しかも今宵は
オオカミになっちまう満月なんて、もう
ペロリと頂いて下さいって言ってる様な
もんだろ?

月見と洒落込んで、酒も入り…リビング
正面の大きな窓から見える月を眺めつつ
珍しく床に並んで直に座って、お前と
お前の母親の美味い手料理なんて突つき
ながら。

気がつきゃお前を腕に抱き込んで。

窓から覗く月の光で縁取られたお前を…
まるで月から迎えに来られたかぐや姫
みたいに思って…月の姫を地上の、俺の
元に引き留める為に抱いたなんて。


酒は入ってた。
結構いい具合に。

そう、お前が持ち込んだ重箱と一緒に
親父さんが持たせた珍しい日本酒が丸々
1本…って言ってもほんの4合程度だが。

チャンポンした訳じゃねぇし、そんな
酔った気は無かったんだが…

酒のせいにする気も無いが
ああ、そうだな。

正直に言えばめちゃくちゃヨカッタ。


ベッドでもねぇ硬い床の上で、着ていた
俺のシャツは敷いて遣ったとはいえ、
冷たいフローリングに組み敷いて。

窓は閉まっちゃいるがカーテンは全開、
月の明かりで煌々としたリビングで…
俺の咲を抱いた。

白く美しい肌に月光を弾き、まるで…
本当に天女のようなこの女を。

引き留める唯一の手段だとでも言う様に
ガンガンに奥を突き、俺ので串刺し、
種付けて。

…まぁ、ピルでその種は芽吹きゃしねぇ
んだけども。


そんな彼女とのSEXは死ぬほど悦くて。


ああ、やっぱりこいつだけは離せねぇ
なんて思うのだ。今更ながらに。


どんな手を遣ってでも俺の元に結び付け
絶対ぇ誰にも奪わせねぇ

そんな末期な宣言を月にするみたいに
見せつけて。


ああ、…なぁ咲、どうだ。
立ち待ち月だなんて言われるようなこの
満月から3日目の月が、昨日までより
少し遅れて出て来る今夜まで毎夜毎夜
抱き続け…。

時代が時代(平安)なら、今夜が三日の餅
(みかのもちい=結婚)で、今から所顕
(ところあらわ)しの披露宴だぜ?

俺のメンバーと咲の家族と友人
事務所呼び付けて本当にしちまいたい。


そんで俺らは晴れて夫婦。

立って待とうが寝て待とうがお前と2人
ずっとこうして月を眺め…。


なぁ、…そんなお前が目を醒まし立つ迄
待ちきれない俺でもいいか?



忽(たちま)ち腕に攫っても

お前は

その団子みたいな笑顔で

蕩けるように笑ってくれるだろ?









Happy super MOON 2015



皆さまは佳い月夜を
お楽しみになりましたでしょうか?











end.

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