Event 1

□スペシャルDAY
1ページ/4ページ

【 スペシャルDAY 】


もう直ぐ俺の誕生日。
それは世間的にはバレンタインで、
女の子が男にプレゼントをあげても
何の不思議もない日。

昔から、この日生まれなのが
凄く不運だって気がしてた。

だってそうだろ?
好きな子がさ、俺にくれた物…それが
本命なのか義理なのか見極めないと
いけなくて。

アイドルなんて仕事柄、女の子からは
年中色んな物を貰うんだけど、やっぱ
それでも、このバレンタインってのは
ちょっと特別。

女の子がいつもよりもっとドキドキした
感じで近づいて来て、そんで渡すんだ。
チョコとか、甘い物、それから心。


そう、あの子も。


彼女は俺の誕生日知らなかったみたいで
…俺も何となくファンの子らがこの日は
バレンタインだけど俺の誕生日ってのが
暗黙の了解みたいになってて、そういう
風に接してくれるからウッカリしてた。
他の連中はちゃっかり彼女に誕生日を
アプローチしてたのに。

だから当日、皆と同じように同じチョコ
渡されて正直「あれ…? コレだけ?」
って思って。…それに気づいた京介が
からかうように彼女に言った。

「咲ちゃん、今日翔ちゃんの
誕生日なの、知らなかった?」

明らかに慌てふためく彼女。
そして、すっごく申し訳無さそうに、
あの困った仔犬みたいな目をして。


「あっあの…っ、翔くんゴメンね?
私、その、すっかり抜け落ちちゃってた
みたいで。えっと、あのっ、…後日、
お祝いしてもいい?」


アワアワして、見るからに困った!って
カオしてそんなこと言うから、俺は
笑って応えて。


「気にしないで!
でもしてくれるんなら嬉しいな。」


そう言って。

…でも内心はスッゴク凹んだ。
そっか、咲ちゃん…俺の誕生日
知らなかったんだ………。

それってさ、もー完全にアウトオブ眼中
ってヤツ? 俺にチャンス無い?
彼女の特別な男になるチャンス。



ううん、いや、まだ。
だって彼女は祝ってくれるって言ったし

そう、「あ、そーだったんだ?」じゃ
無くて、あんなに申し訳無さそうにして
ちゃんと後日わざわざ祝ってくれるって

それって、どーでもいい奴にはしないし
言わないよな?…たぶん。


天然な彼女。
スッゴク可愛くて、いつだってニコニコ
してて、真面目で頑張り屋。
しかもあんなに可愛いのに凄い声量で
難しい曲を歌いこなすんだ。
神堂さんの、あの難解な曲を。

まるで呼吸でもするように。

歌ってる姿も彼女は綺麗で。
しゃんと伸びた背筋、華奢な手が歌と
共に広げられると…まるで天使が翼を
広げたみたく見えるんだ。
凄い声量なのに優しい声。
胸にズドンってくる。


最初は第一印象。
彼女は第一印象から可愛くて、実は俺…
会ったその日にはもう惹かれてた。
そして更に。俺は…彼女が歌う姿に…
二度目の恋に堕ちたんだ。


楽屋での顔

楽しげな声
優しい喋り
直ぐ赤くなるトコ

そんなのを知れば知る程好きになって。
俺は気が付けばいつも彼女を目で追って
スタジオ入りしたらまず一番に。
俺のこの目が彼女を探す。

それ程までに。


それに、俺は彼女への好意を隠すつもり
なんて全く無いから、尻尾ブンブン、
彼女のトコに駆けつけて。

皆だって知ってる。
俺が彼女を好きなこと。

だから彼女も知ってると思ってた。

俺の気持ちも、誕生日も。




でも、巻き返すからな!

皆今のやり取りで同情したような目で
ニヤニヤ。その目は「あー翔残念〜」
そう言って嗤ってる。

でも、そんなの未だ分かんないからな!

見てろ、彼女に祝って貰う誕生日。
きっと特別な日にしてやるから。



*
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ