Event 2

□予約
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「…どの子が『たっくん』?」

「夏輝さんっ!」


まさかとは思うけど、本気の声を滲ませてる
彼に慌てて手を引いて。

微笑ましそうに此方を見ている先生方には
挨拶をして彼を引っ張った。


「…何で止めるの。」

「止めますよ! 何する気なんですかっ」

「乱暴な事なんてしないよ?」

「そりゃ普段なら絶対しないでしょうけどっ
…娘に関しては貴方がどんなに溺愛してるか
知ってますから!」

「――娘に関して『は』じゃないでしょ?」


…もう…ッ、もうもぅ!

その甘やかな目に私が弱いの知ってて…
その目を使うの、ほんっとズルい。


「ウチの大切なお姫様たちだからね。」


クスクス、と笑って私の頭にキス。
…幼稚園の駐車場の端っことはいえ、公共の
場でのその行為に、真っ赤になってしまう。

いっ、いくら夫婦でも公共の場は…っなんて
お説教しようとしたら、そっと…『シー』と
形取った彼の指先。

…娘はいつの間にか、安心出来るパパの肩で
寝ちゃってたみたいで。


「(…だって、嬉しかったから。)」


コソッと囁かれる甘やかな囁き。


「(へ…?)」

「(『俺だけ』の宣言。)」

「――ッ!!!」


思わず出そうになった声を両手で抑えて。

そりゃあの言葉に嘘なんて一つもないけど

恥ずかしくて
居た堪れなくて

思わず逃げを願って視線で探した山田さん。


「あ、山田さんならここで会ってスグ、
先に帰って貰ったよ、勿論。」


そんな逃げの手すら塞がれて。


「…今夜は予約ね?」


そんなの、今夜だけに限らないクセに。

そう負け惜しみで囁いてみても、私だって
嬉しくて。

結婚して、子供も生まれて…
こんなに何年も経ってても愛情の出し惜しみ
なんてしない貴方だから。


「…じゃあ…
今夜の寝かしつけはお願いしますね?」

「――どんとこい。」

「今寝たら、多分夜寝ませんよ?」

「えっ、あっ、そうか!」


そう私に指摘され、寝入っちゃってる娘を
起こそうとワタワタしつつも…結局そんな
ヒドイコトを出来る人ではなく。

しっかり娘を抱き抱え、なのに器用に私の
手も取って…車へとエスコートしてくれた
王子様。…ううん、王様?

いいえ


――私の旦那様。


今夜の予約はどうなるかしら。

…娘が眠ってるから『今夜』では無くて
帰ったらそのまま…かも。


そんな予約の段取りを改めて。

今夜は特に特別な日では無いけれど
…ん? あれ? あっ『1122』イイ夫婦の日。


…だったら

ううん、そうじゃ無くても。


予約されたレストラン宜しく、
私も彼の為に愛の腕を振おう。


二人で差し向かい、偶には夫婦水入らず?

娘が起きて来たら起きて来たで
それはそれで幸せ。



私たちは今年も一緒に過ごしてく。


そう

今年も



そして

もちろん


来年も。





















Happy Sweet Couple’s Day
xxx 2021.11.22






















どうぞ
愛するパートナーとお過ごし下さい♡



end.

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