Event 2

□一緒
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【 一緒 】


まだ夜も明けきれない朝早く
私は勝手に目が覚めることがあって。

それは
ずっと忙しい日が続いたり、或いは…
元々不規則なお仕事ではあるんだけど
更に時間に追われたお仕事が続いた時には
特に顕著に現れるんだけど

眠いのに眠れない
まだ起きたくないのに…眠りは全然
私の元に訪れてくれなくて。

でも寝なきゃ…お仕事に差し支えちゃう
そう思うと余計ダメで、なかなか寝付け
なかったりして。

それで焦ると逆効果なのはもう経験上
よく知ってたからそんな時はゆっくりと
頭の中で音楽を流す事にしていた。
ついついスマホを見たり、実際に音楽を
掛けたりするのは過刺激になるんだって
ある番組で教えて頂いてからは特に。

そんなちょっと不眠の兆候あり、なんて
主治医の雅子先生にも注意されてた私
なのに…夏輝さんと暮らすようになって
からはそんな日々だったのが嘘のよう。

どんなに疲れていても
少し体温の高いあなたの側にくっついて
眠れば直ちに睡魔が襲ってきて…
あっという間に深い眠りに攫われてしまう。

…それは、ある意味彼といると…その、
実際に体力を…その、持っていかれるコト
なんてのをスル、っていうのも…それは
無きにしも非ずではあるんだけど…


ッ、
チガウ、違うのよ?
そ、そんな毎晩って訳じゃないんだけどっ
…その、二人でくっついてたら…その、
つい、そんな雰囲気になっちゃうことも
多くて…って、私誰に言い訳してるの?

もぅヤダ…ッ、色惚けしてるよね?
冬馬さんにも秋羅さんにもついこないだ
そう言って揶揄われて、もう逃げるように
レッスン室に篭っちゃったんだけど、あの
…普段は揶揄ったりしない神堂さんにさえ
『…今更だな』なんて溜息を吐かれて…
ああ、ダメ、思い出すだけでワ〜ッって
声上げて走り出したくなちゃう。

…でも確かに。

今こうしてても…
素肌であなたと二人くっついてシーツの中
ピッタリ重なり合って眠るこのひと時は
本当に幸せで。

目が覚めても
まだ早いのに目が冴えちゃっても

あなたのその、私だけに見せてくれる
無防備な寝顔をずっと見てるだけで焦り
なんかどこに行ったのか、唯々じんわりと
癒されてる。

…何ならずっとこのまま見ていたい。
ずっと夜も明けず時間も止まっちゃえば
良いのに…なんて思うくらい。

だからこんな風に目が覚めちゃった時は
ラッキー!なんて思ってジッとあなたの
寝顔を見つめるの。

最近はこんな風に変な時間に目が覚める
なんて事も殆ど無くなっちゃってたから
実はそんなに朝が強くないあなたの、
でも責任感が強くて、しっかり者で…
本当はどんなに疲れて眠くてキツい朝でも
キッチリ予定時間には起きて、準備も
滞りなくしちゃうあなただから

…でもお仕事の都合でいつだって私の方が
先に、二人のこの温かなお家を出なくては
いけなくて…だからこそ私はこのひと時を
ジッと密かに堪能する。

私が起きなきゃならない時間まで
まだ寝てても良いのに私に合わせて必ず
起こしてと言ってくれる彼を起こすまで
じっくり、ゆっくり、まったりと。

この薄闇のまだお日様も眠るこの時刻、
温かなあなたの素肌に擦り寄って
ジッとあなたの、いつもより少し若い
その寝顔を見つめて…いつの間にかまた
私も夢の中。

そんな日が

今日も
明日も
明後日も

コレってやっぱり色惚けてるのかな

…ウン、きっとそう。


だってこんなのとてもじゃないけど
言えないもの。

友達に言ったら呆れ顔で『また惚気?』
て言われそう(ううん絶対言われる)だし
家族になんて恥ずかしくて話せないし、
皆さんにだって…もちろん夏輝さん本人に
知られたら恥ずかしくてお顔見れない!

ううん、それ以前に夏輝さんのことだから
もしこの時間がバレちゃったらもっと早く
起きるようになっちゃうかも。
そしたら私の大切な時間なのにっ…もう
こうしてらんなくなっちゃうかも…?

ヤダヤダヤダ、それは困る!

…なんて一人でぐるぐる考えて、またその
自分の考えのループに赤くなる。

何言ってるのかしら、眠いからだよね
こんな色惚けループに陥ってるの。

だって、それくらいあなたとの時間は
どれも全部貴重だから。

それはもちろん、一緒に過ごしてる時だけ
じゃなくて、離れててもずっとあなたを
気にして、あなたに気に掛けられて…
そんな日も含めて全部。

ずっと一緒にいたいなぁ

ずっと

この先ずっと…


あなたもいつも、そう口にしてくれるけど
きっと私の方がずっとそう思ってる。

あなたがそばにいるだけで

それだけでしあわせ


ああ…あたたかい。

きもちいい


あなたのぬくもりが
あなたの匂いが



そのわたしを無意識に抱きよせる

その手が…



わたしをまた
眠りの淵に誘って…



ねむい…

ねちゃおう…


あなたの腕のなか

丸まって
くっついて


このまま きょう は…



ふぁあ……ふ、



だい すき …

な つ  き  さ ……





*
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