Event 2

□一緒
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真夜中

彼女を激しく求めて
先に眠りの国に落ちちゃった…いや、
落としちゃった?俺が好き勝手した彼女の
カラダを綺麗に洗い清めて

素肌のまんま抱き締めて入ったシーツの中。
柔らかで温かな彼女のカラダ。
湯船に浸かった後だから以前はビックリ
するくらい冷たかった彼女の小さな手足が
こんな風に温かなのは俺と住んでから。

そんな自負がまた嬉しくて
彼女のカラダをしっかりと抱き、手も足も
全てをくっつけ息を吐く。


ああ、心地良い

何だろう…充足感?
全て満たされた感じがする。

いや、今抱いたトコなんだから実際に
完全満たされてはいるんだけど

…そんな性欲的な意味だけじゃなくて。

心の底から満たされてるような
いや違うな『ような』じゃなくて満たされ
何なら溢れ返ってるくらいに。
そしてそれは心なんて端的なものだけでも
無く、何て言うの?魂から宇宙に繋がって
満たされてるっていうくらい…

…って俺、なんかヤバくない?
出てくる例えが完全にトんじまってる奴
臭くないか?

…つまりはそれくらいズバ抜けた充足感な
訳だけども。…これは音が降りて来た時の
春でさえ、ここまでのは味わった事無いん
じゃないかな…。

いや、春ほどのミューズの御加護は俺には
想像でしかないんだけど。
一応俺もミュージシャンの端くれだから
女神なる彼女(ミューズ)の御加護である
あの御褒美的感覚は知ってるけど、それと
比べて…こんな風に言うのは罰当たりなの
かもだけど、咲ちゃんから与えられ、
彼女と感じる充足感は…何処もかしこも
俺専用のオーダーメイドって感じで爪先
から頭の先までピチーッとラップされてる
みたいに一分の隙もなく俺を包み込む。

…そう、それは正に彼女のナカみたく。

俺だけを迎え入れ、
俺だけを包んで締め上げ…
俺だけの種を奥に……

ッて! そう言うシチュエーションだけの
話じゃなくて!

…ダメだ、
彼女のスベスベの肌を撫でながら、
彼女の温かなカラダを抱き締めながら
考えてたら…ついソッチの方向に感覚が
呼び戻されちゃうな…

…だって仕方ないだろ。
彼女は本当に抱き心地よくて…

…抱き心地だけじゃない

彼女と一緒に居るのは本当に心地よく
何処までも何時までも一緒に居たいと
思ってしまう。


…思うだけじゃなく、実際に彼女には
そう口にも出しちゃってんだけど。

堪え性のない俺。
彼女を目の前にしたら…十も上の男の沽券
とか同じ業界での先輩である立場とか
そんなの一切ぶん投げて溺れちまって
彼女を離すまいと必死にあの手この手。

いや、離すまいとかって計算云々って訳
でもなく、単純に彼女の全部が欲しくて
跪いて乞い願って…


我ながら必死だよなぁ…

そんな必死にギュウギュウにしなくても
彼女はちゃんと俺のことを見て、俺への
気持ちも隠す事なく誤魔化す事もせず…
全てて応えてくれてるのに。


うん、そうだな
彼女に応えて欲しくてってより、俺がもう
彼女への愛しさが溢れ返り過ぎて…唯々
ダダ漏れになってるだけ、って感じ?

分かってんだよ、
自分でも自分の愛情が重めだってのは。

他の誰にも…今までこんなに執着なんて
して来なかったのに、こんなに歯止めが
効かなくなるなんて。

元々言葉にはする方。
口下手って方じゃないしどちらかと言えば
的確に言葉には出して来た方。
ああ、でも自分の気持ちなんてのはあまり
向き合って来なかった気がするからそんな
上手くはないのかも。

…それでもコミュニケーションって世で
言う関係を円満にする気遣いを一切捨てた
(本人は棄てるどころか最初から持ってない
って意識かもだけど)春よりはかなりマシ
だと思うし、ノリだけで要らん一言まで
言っちまう冬馬や、先の気付きや気遣いは
恐らくメンバー内で断トツのクセに何故か
ギリギリまで放置主義の秋羅よりはずっと
…所謂世間との関係構築は上手いのだとは
思うけど。

っつーかだからこそこんなリーダーなんて
柄にもない役割押し付けられてんだけど

…って話が逸れた。


そんな俺だから彼女への愛情表現は正に
言葉に尽くし、手を替え品を替え。

そんな俺に…彼女も言葉の全て、態度の
全てて返して応えてくれてて。

そんなの、もー可愛くって愛しくって
ずぶずぶ溺愛しちゃうに決まってるだろ?


だから、こうして腕にした彼女を…もう
一足先に眠りの国に辿り着いてしまってる
彼女を…起こさないように細心の注意を
払いながら(って言うかあんだけ翻弄した
後だからそうそう簡単には目も覚ましては
くんないんだけど)彼女の寝顔をジ…ッと
見つめるんだ。

普段よりあどけない幼い寝顔。

これがさっきまであんな婀娜めいた顔で
俺を焚き付け、俺の箍を外した女性とは
想像もつかない清らかな寝顔。

この二面性。

もしかしたら俺、とんでもない女性に
心奪われたのかもしんない…と思ったのは
一度や二度じゃない。

そんな風に思ったところで…今更彼女を
手放すなんて絶対に有り得ないけどね。
こんな男を狂わす小悪魔、野放しにしたら
被害甚大だから俺が囲っておかないと。

…なんて。


*
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