Novel


□免許
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「おはようございます。」

「お、ハヨー! 来た来た!」
「おー。
最近にしちゃ珍しく時間通りだな。」

「すっすみませ…!」

「ちゃんと毎回連絡入ってただろ。
お疲れ様。今日もドラマ収録上がり?
毎日大変そうだけど大丈夫?」

「あっ、はいっ。でも次回の撮影で私は
クランクアップなので。こないだも…
あの…っ、あとその前も遅れちゃって
すみませんでした!」

「うん、だからそれは秋羅の悪ふざけ
だから。ちゃんと連絡は入ってたし、
それにこないだ遅れたのはドラマの撮影
押してたからでしょ? 咲ちゃんが
悪い訳でも、また咲ちゃんが
どうにか出来る事でも無かったんだし。
…それに、ライブに遅れたとかじゃ無い
からそんな気にする事無いよ。」

「そーそー。どうせ春サマもミキサー室
篭って時間も何も無い感じだしさ。」

「え…? じゃあ今日も?」

「うん、ちょっとアレンジに詰まってる
みたい。だから少し待っててくれる?
今日はココが最後?」

「はいっ、私の方は全然大丈夫です。」


コクリと頷いて見上げたら、何故か
秋羅さんと冬馬さんが笑ってらして。


「ワンコロか。ご主人待て、ってか。」
「ぶくくーー!」
「秋羅っ!冬馬っっ!」

「え…???」


此処は丘の上のJADEスタジオ。
今夜は久し振りの神堂さんのレッスンで
…此処の所、お仕事と教習所で予定が
詰まりがちだったのもあって、それまで
月に3回はあったレッスンが2回とか
1回とかになってて。

今日は丸々半月ぶりだから朝から凄く
楽しみで…そう、報告もあったから。

実は教習所に通うようになったのも、
JADEの皆さんとお話ししたから。

夏に、何の話からか車の話になって。


『でさー、車買い換えようかと思って』

『どんなのにするんですか?』

『咲ちゃんはどんなのが好き?』

『えっ?! …ごめんなさい、車とか
全然分かんないです。』

『あー、女の子だもんなー。』

『ごめんなさい…。』

『いやいや、謝る事じゃナイっしょー』

『あっでもまぁるい感じの、好きです!
小ちゃくて丸いの。』

『フォルクスワーゲンみたいな?』

『ふぉ…?』

『あー、ほら、カブトムシみたいな車、
知らない?』

『知らねぇだろ、年代的にも。』

『そっか、そうだよなぁ。
でも最近の車で丸いのって少なくね?』

『今なら国産の軽とかじゃ無いか?』

『あ、なーる!』

『こ、国産…? そっか、外車とかって
あんまり身近じゃなくて…。』

『そいや山田さんも国産車だよね。』

『しかもセダンな! 今時珍しい。』

『え、あの車、珍しい車種なんですか?
お父さんも似た感じの車だから普通の車
だとばかり…』

『いやいや、普通。至って普通車なんだ
けどな。今はセダンより夏輝みたいな
ワゴン車や冬馬の…はちょっと例外だが
四駆とかが主流だからな。でも最近は
小さめの普通車か軽も多いな。今時のは
軽でも広いし、エンジンも良いし。』

『わごん…よんく??? け、軽は
知ってます! 小さい車、ですよね?
あっ、秋羅さんの偶に乗って来られてる
小さい車も可愛くて好きです!』

『え、アレ? 金食い虫のミニ?』

『ミニクーパーも知らねぇか…。』

『うっは、萌えっ! ホントに周りに
男っ気無いんだ! 咲ちゃん♡』

『へ? え?? 何でそんな話に…っ』

『冬馬っ!…そう言えば咲ちゃんは
車の免許は持ってないの? 自分の車
とかは考えて無い?』

『えっ? あ、そうですね…高校の時、
3年生になると取りに行ってた子も居た
けど、私はその頃デビュー前のレッスン
と学校一色で…。』

『これからは? 自由度増すよ?』

『そうだな、有れば自分の都合で動ける
からな。便は良いな、数段。』

『そ…うですよね。毎回山田さんの
多忙な時間を割いて貰わなくても良い
ですし…。あの…っ、私でも運転免許、
取れるでしょうか?』

『取れる取れる! 80のばーちゃんでも
ブイブイ乗ってんぜ? そうそ、そんで
鬼マネの監視下から抜け出そ?』

『80はブイブイ言ってねぇと思うぞ。
逆に超セーフティドライバーだろ。』

『取ってみたら? 世界が広がるよ。』

『はい…っ!』


なんて会話が有ったりしたのだ。
まだ車の種類とかはよく分かんない
私だけど。

だから実際に行動に移して、学生さんが
夏休みを利用して取り終わった頃だと
言う9月から教習所に通い出した。
そんな私でも順調に(…って、やっぱり
何回かは延長になっちゃったけど…)
どうにか仮免許を取得した。
だからそれを皆さんに報告したくて!

ウキウキして今日は来たのだ。
仮免許証を持参して。

教習所に通い出してそれを報告した時の
皆さんの反応は様々で。


『えっ、マジで! やったぁ、じゃあ
鬼マネ監視も後ちょっとじゃん?
遊ぼーな、エエトコ連れてっちゃる♡』

『へ? え、あの…私まだ、
自分の車を買うかまでは…っ』

『買う時は言えよ? ディーラーでも
中古でも付き合ってやっから。』

『中古はやめといた方が良くないか?』

『毎度此処来たら点検くらいは
してやるけどな。』

『つってもお前整備士じゃ無いだろ。』

『なーんて、なっちゃんとしちゃー
咲ちゃんの送り迎え出来なくなる
のがザ・ン・ネ・ンで車買うの反対な
だけだったりしてー? ひゃっは!
真っ赤!えっ、図星?! 』

『冬馬ッッ!』


…なんて。
仮免許、見せたらどうだろう。
驚かれるかな、また揶揄われる?

そんな事を思ってドキドキ。



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