Novel


□Memories DAY
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【 Memories DAY 】
(君との思い出の日)


番組の趣向で昔の写真が必要になって…
子供の頃の写真や学生時代の写真をその日は
持ち込んでて。

同じ番組に出演してたWaveの皆さんと収録後
今日の番組のその話で盛り上がってた。

私も皆さんの写真を見せて頂いて、世代も
近い事から当時はこうだったよね〜なんて
話でも盛り上がり。

でも総じて…やはり皆さん元々アイドルになる
素質があったって言うか…普通の子たちとは
違うって言うか。どの写真もどこかキラキラ
してて眩しくて。

私なんて普通の子、ううん、どちらかと言わず
とも大人しく完全に集団に埋没しちゃうような
目立たない子だったからこうして実際に写真を
見比べると違いは歴然。

番組ではそんな『ザ・大人しい子』な私の写真
にも、出演者の皆さんは「可愛い〜!」なんて
大袈裟に仰って下さったけど。

本当はもう仕舞って隠してしまいたい。

だけど皆さん私の写真を回し見しては一つ一つ
話を振ってくれるからなかなかそれらは手元に
戻らなくて。居た堪れなくて恥ずかしくて
席を立とうにも写真をそのままには出来ないし。

こんな時に限って山田さんは社長が戻らない
って事務所に呼び戻されてしまってていつもの
山田さんからの声掛けも期待出来ない状況で。


「咲ちゃん、今日タクシーなんでしょ?
この後も特にないよね、この時間だし。」

「えっ? う、うん…?」

「じゃあ送ってくからゆっくりして行きなよ。
こんな風に時間を気にせずにゆっくり話せる
なんて滅多に無いんだしさ。」

「亮太、京介っ無理強いするなよ。
…咲ちゃん、予定有るなら無理しないで。
こいつらの言う事無視しちゃっていいから。」

「えっ、別に無理なんてっ!」

「聞き捨てならないな〜一磨?
俺は事実確認しただけだろ?」

「…へぇ?
じゃあ亮太は誘う気なかったんだ?」

「あっあの、報告会?反省会?みたいなの、
するんですよね? …私、お邪魔なら」

「「えっ、ちが…」」
「邪魔じゃないっ!」


亮太くんと京介くんに今日のこの後を訊かれ、
一磨さんには気遣って頂いて、これ以上長居
して皆さんのお邪魔になるのは…そう思って
慌ててそう言えば。


「俺、もっと咲ちゃんと話したいし、
居て欲しい。こんな機会そんな無いし!」


そう、ハッキリキッパリ…誤解のしようもなく
言い切ってくれたのは翔くん。

翔くんはいつも…こうやって私に100%の
善意な好意を示してくれてて。
恥ずかしいけど、嬉しい。

だから私もちょっと照れながらそのご好意には
しっかりと感謝を示して。


「翔くんありがとう。…皆さんのお邪魔で
ないならご一緒させて頂いていいですか?」

「…俺は最初から居てって言ってるよ?」

とは京介くん。

「咲ちゃんが無理に付き合ってくれてる
訳でなきゃいいんだ。もちろん。」

とは一磨さん。

「――正直、咲ちゃんが居てくれた方が
場の雰囲気も良くて助かる。」

「京介が俺の言葉尻取ってしまわなきゃ俺が
誘ってたのに。ほんっと食えないヤツ。」

とは義人くんと亮太くん。


全員一致でのお誘いに私が断る理由もなく。
一瞬ドキッとした雰囲気だったから、それで
やっとホッとして。


「じゃあもうちょいじっくり見せてね写真。」


そう言って私の高校時代の写真をひらひらと
振った京介くんに「うぐ、」と詰まれば。


「でもホント可愛いよね、コレ高校何年?」

「お前が言うと犯罪クサイ。」

「…持ってるのが小学生の写真とかだったら
もっとヤバいだろ。まぁ京介はその属性かなり
薄そうだけど」

「小学校時代のも相当可愛いけどね。」

「ぅわ…マジでヤバい?」


――うわ〜ん、もうヤメてぇ…!

皆さんがいつまでもそうして写真を見てるのに
耐えられなくなって、本当にそろそろ回収
しないと…!って身を乗り出した、その時。


「えっ、アレ…ッ?!」


一際大きな声で長い腕を伸ばし、京介くんが
後で摘まんでた私の小学校時代の写真を奪った
翔くん。

びっくりして声も出せずに見つめてたら翔くん
私の写真をまじまじと見つめて…。


「咲ちゃんって…かもめ第二小学校?」


…それは確かに私が行ってた小学校の名前で。

――え…? でもその写真は入学式の写真とか
じゃないから学校名は入ってない筈。

入学式の写真も確かにあったけど、お母さんの
顔まで出すのは…お母さんのお仕事上ちょっと
気が引けたので持って来ていない。
その代わり遠足の日、たまたま朝は雨が降って
いたから…雨具も入れて、更に大きくなった
リュックを背負った私を出社ついでに送って
くれたお父さんが撮った、お父さんに笑顔で
手を振る私の写真。

そこに写っているのは学校に曲がる角にある、
シンボルツリーともいえる大きな金木犀。

羽を広げたような、とても特徴的な枝ぶりの
それは当時よく帰り道が一緒だった男の子が
『フェニックス』なんて名付けてたっけ…



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