Novel


□お姫様と王子様
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「咲ちゃん、今日の曲で
コラボの分、ちょっと演出での
打ち合わせするから俺らの楽屋来て?」


心の葛藤を漏らさないように、そっと、
腕を離して背中に手を添える。

少しだって咲ちゃんから
離れたくない自分の掌の未練がましさに
呆れつつ、舞台袖から楽屋に促す。


「あっ、はい!…あ、えっと、
オハヨウゴザイマス。夏輝さん、
冬馬さん、神堂さん、秋羅さん!」

「…(クス)…おいで。」

「じゃー皆さん、我らがJADEの
お姫さんは城へ奪還致しますよ〜?」

「もぅ!冬馬さんっ…あっ、
すみません、ちょっと失礼します。」


真っ赤のまんま、俺と冬馬に背中を
支えられながら、群れに振り向いて
会釈をする律儀な咲ちゃん。

先を行く春の背中を追いながら、
彼女の腰へ移ろうとする冬馬の手を
撃退する俺。


「えー…? ヘタレのなっちゃんの
代わりにお姫様奪還したのに、この扱い
酷くね? 感謝して貰いたいんだけど?」

「単にオマエは可愛い咲ちゃんに
抱きつきたかっただけだろ。
夏輝…お前に出遅れたけど、危うく
ブーストかまして周り蹴散らしそうな
勢いだったぜ? 黒焦げのブースターが
スタジオ中臭ってたからなー」

「え? マジで?…俺、
もしかして馬に蹴られる感じ?」


咲ちゃんの半歩後ろを歩く
俺の後ろでコソコソ話す冬馬と秋羅。


「…おまえら…五月蝿い。」

「?…夏輝さん?」


思わず低い声で唸った俺をそっと
見上げる咲ちゃんに、
この上なく優しい目で
何でもないよ?
と囁くと、ようやく冷めかけてた
茹でたての肌が再び茹だった。


もう、可愛すぎてどうしてくれよう?


取り敢えずは、目の前の仕事。
お城に奪還して、舞踏会さながら
君の舞台を華やかに演出しよう。

最強の王様と
強固なお城だけれど、
王子様でもない俺が、
この腕にお姫様を奪還しよう。



覚悟してて?




めでたし、めでたし。


お姫様のお話は
必ず最後はハッピーエンド。

そのお相手は、
たまには王子じゃなくたって
いいじゃない?





end.

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