Novel


□お姫様と王子様A
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「…咲ちゃんっ♪ 」


急に視界が遮られ、
くいっと体が後ろに引かれた。


「あっ…?!」


予期していなかった目隠しに
後ろ向きにたたらを踏んでしまう。

ヒール!
誰かの足踏んじゃったらどうしよう!

もう私は今日の衣装を身につけてて、
靴は編み上げの華奢なピンヒールだ。
踏まれたらかなり痛いはず。


「おっと。」


聞き覚えのある誰かの声が頭のすぐ
上でして大きな手が腰を支えてくれる。


「あっ京介! 咲ちゃんの
腰を抱くなよ! セクハラだろっ」


…京介くん?

ってことはWaveの…
あ、目隠しのこの声は翔くん?


「つーか翔ちゃん、女の子に簡単に
触っちゃった段階でセクハラだから。
あ〜あ、今をときめくアイドルグループ
Waveから2人もセクハラ訴訟はシャレ
なんないんじゃない?」


呆れ声は亮太くん。


「あの…おはようございます。
翔くん? 京介くん、亮太くん」


目隠しされたまんま、わかる範囲で
ご挨拶。
Waveの皆さんとは音楽番組はもちろん
去年からWaveさん冠のバラエティ、
映画やドラマでもお世話になりっぱなし

国民的アイドルグループなのに
いつも気さくに声を掛けてくれるから、
ついお友達のように接してしまって
いつも山田さんに注意されてる。


「…ぷっ…その状態で挨拶…?」

「っ義人! ごめんね? 咲ちゃん。
ほら、翔! 手離して。」


そうっと手が離されて、唯でさえ
派手に飾り付けられたスタジオセットが
眩しい。目をパチパチ瞬いていると
目の前に翔くんの仔犬みたいな困った顔


「咲ちゃん、ごめん。」

「…大丈夫だよ?
ちょっとビックリしただけだから。
それより私、足踏まなかった?」


「咲ちゃんくらいの体重じゃ
踏まれてもそう痛くないでしょ。」


まだ腰を支えてくれたまま、至近距離で
京介くんが艶然と微笑んだ。


「あっ、ごめんね?
支えてくれてありがとう。京介くん。」


ついと身を引くと、いつの間にか
京介くんの手を捕まえてた亮太くんが
キラキラのアイドルスマイル。


「京ちゃんざぁ〜ん念! 悪魔の誘惑は
天使には通用しないみたいよ?」

「小悪魔に言われたかねーよ。」

「…目糞鼻糞…」

「義人っ! 京介、亮太。
お前らみんな咲ちゃんに近過ぎ。
ごめんね? 咲ちゃん。」


謝ってばかりの一磨さんに、
逆に申し訳なくなる。


「いいえ?一磨さん、すみません。
改めておはようございます。
義人くんも。
今日はよろしくお願いしますね?」

「…こちらこそ。
騒がしくして…ごめん。
今日の衣装はクリスマスキャロル?」


いつも口数の少ない義人くんが、
優しい目をして聞いてくれる。


「わぁ、さすが義人くん!
一目で分かっちゃった?」


いろんな本に詳しい義人くんと
原作のディケンズの話に花を咲かせて
いると、この冬話題の映画で主演と
主題歌を役名で歌っている相馬さんと
隼人さんが入って来た。



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