Novel


□お姫様と王子様A
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「クリスマスキャロルか。懐かしいな。
舞台は大昔端役で出たが…
またやるなら主演でしたいものだな。」

「金貸しの爺さんですか?
じゃあ俺を精霊に抜擢して下さいよ。
ネチネチと後悔させてから存分に
改心させてあげますよ?」


「うわぁ…性悪そー」

「き、京介くん?…あはは、でも
その時は是非私も参加させて下さい。」


面識のある京介くんと隼人さんが
軽口を叩き合っているのを横目に
相馬さんと微笑み合う。

相馬さんと隼人さんは、普段
歌手活動されている訳でも無いのに、
今回の映画での役名でとはいえ
歌手として歌番組に出演、
迫力ある歌声で歌い切っている。


「相馬さんと隼人さんがあんなに
歌がお得意だなんて知りませんでした。
前のドラマの打ち上げでも二次会の
カラオケには確か…参加されてません
でしたよね…?」


心から感心して言うと、相馬さんが
ほんの少し目を瞠った。


「あんな前の打ち上げまで憶えて
くれてるの?…歌手であり、女優の
咲ちゃんに聞かせられる程じゃ
無いから今から緊張するよ。」

「そんな!放送で見ましたけど、
とっても素敵でしたよ?」

「…JADEなんて日本を代表するような
バンドとサシで歌うようなお前に褒め
られたって肩身がせめぇよ 咲。」

「…白鳥っ、」


京介くんとふざけ合ってた筈の
隼人さんが皮肉気に嘲笑い、
相馬さんが隼人さんの肩に手をかけた。


「いいえ?…いつもJADEの皆さんの
一流の音楽と神堂さんの歌声を聴いてる
耳だから、確かに相馬さんと隼人さんの
歌は素敵だと言い切れるんですよ?
相馬さんの深くて低音の声に隼人さんの
高音が少し掠れる囁く様な歌い方が
あの歌にはピッタリだと思います。」

「…っ…そうかよ…っ…」


途端に耳まで真っ赤になった隼人さんが
ぷい、とそっぽを向く。
…あれ?余計な事だったかも…。

困惑してると、キラキラと目を輝かせた
翔くんがぐいっと近づいて来た。


「咲ちゃん、俺らの歌は?
クリスマスの新曲も聞いてくれた?! 」


明るい、まるで家のまーくんの質問攻め
みたいにたて続けに聞いてくる翔くんに
微笑ましく思いながら答えていると
相馬さんが隼人さんの肩を掴んだ手を
ポンと叩いて放し、私にありがとうと
微笑ってくれた。



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