Novel


□告白
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♪〜♪〜♪〜

『Kiss me…貴方に触れて欲しくて
…ぷるるん♪』

〜♪♪♪

咲ちゃんの声と、新曲が流れて…
無意識に喫煙所のテレビに目が
吸い寄せられると…
咲ちゃんのぷるぷるの唇が
アップで映し出されていた。

柔らかさを強調するように、
人差し指で弾いて投げキッスを
するような仕草の後、くるんと
イタズラな笑顔の残像を残して
フレームアウトして行く。


「…やー…たまげた…。」

「ちょ、ちょっと見た?! 今の!! うっわ、
咲ちゃんマジちょー可愛い〜っ!
『ぷるるん♪』だってよ?! ぷるるんっ!
柔ぁらかそうな…つーかあれ、
絶対柔らかいよな?! かーっ
反則でしょアレ!」


咥えていた煙草をポロリと落として、
珍しく秋羅が惚けている。
大興奮の冬馬は大振りの身振り
手振りで可愛い可愛いと大絶賛だ。

…いや、確かに可愛いけどさ!
男として自分の彼女が他の男の目を
釘付けにするくらい魅力的なんて…
自慢だけどさ!

…正直、複雑。
俺、心狭いのかな。


だいぶ前、咲ちゃんから
確かに聞いてはいた。
化粧品のCMって女性からすると、
憧れの素肌美人の代名詞なんだとかって
咲ちゃんも決まった時は興奮気味で。
…だからてっきりファンデーションとか
だと思ってたんだ。
咲ちゃんの肌は本当に綺麗で、
さらっさらのつるっつるだから、
そうだと疑いもしなかった。


「…なっちゃん?
うわ、何そのオーラ! あんな可愛い
ぷるるん♪な彼女独り占めしてる男とは
思えないんですケド!」


今日からスタジオでの音合わせ、
今は開始前の煙草休憩中。


「…何だよ?」

「うわー機嫌悪っ?」

「よしとけ、冬馬。
触らぬ神になんとやら、だ。」


咥え煙草で珍しく携帯を弄っている
秋羅がしれっとそう言った。


「(…何? なっちゃん咲ちゃんと
何かあった?)」

「(さあな。…でもここんとこ
咲ちゃんハードスケジュールだから
逆じゃねぇか?)」

「(…え…じゃあ何、)
なっちゃん、欲求不満?!」

「…バッ、バカお前っ」


コソコソコソコソ、喫煙所の隅っこで
口パクみたいにゼスチャーで立ち話
してた冬馬と秋羅。
急に大声を上げた冬馬を中央の
ソファから睨み上げる。


「こっわ…!でも珍しくねえ?
あのなっちゃんが、ねぇ?」

「…確かになぁ。お前は年中欲求不満で
サカってても珍しくもねぇけど、
夏輝がってのが…なぁ?」

「何気に失礼じゃねぇ? 俺の夜は
順番待ちで不満どころか打ち止め寸前
だっつの!」


「その年で機能不全か。」


キィ、という扉の音と共に
中に入って来た春が1本煙草を咥える。


「ちょっ、春まで何よ。」

「それ吸ったら始める?」


時間通り、逆算でもしたかのような
春の行動に苦笑しながら、俺は
一足先にチューニングをするために
スタジオに戻った。



*
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