Novel


□溺愛
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大好きな心が溢れて止まらなくなった日
夏輝さんに受け止めてもらった日
夏輝さんと初めてのキスをした。

優しい啄ばむようなキス。
何度も、何度も、繰り返し…。
気持ちが溢れすぎて、泣き出して
しまった私が泣き止むまで、
唇に、溢れる涙に、ぐしゃぐしゃだった
はずの目元にまで優しいキスを
送り続けてくれた。


キスは初めてじゃなかった。
高校生の時、付き合ってた人が
いたから。

サッカー部の先輩で、
私を好きだと言ってくれた。
2つ上の先輩だったから、
付き合い始めてスグ
遠距離恋愛になった。
初めてのGW、先輩は帰省してくれて、
沢山のデートをした。
その時に、何度かキスをした。

夏休みには先輩の独り暮らしの
お家に行って…その…そういうコトに
なりかけた。
でも、私は全然コドモで、
覚悟なんてできてなくて、
受け入れることが出来なかった。

それから先輩とは気まずくなって…
最終的には、先輩には同じ大学の
彼女が出来て…オシマイ。
…よくある失恋話。


でも、この経験から…何となく
恋愛に尻込みするようになって。

…告白は何度かされたけど、
やっぱりダメで。

それなのに、なんで夏輝さんは
こんなに深いところまで入って
これたんだろう。
臆病になった私の心に、
無理矢理なんて一つもなく、
いつの間にか入り込んでいた。


夏輝さんは、私が芸能界に入る
ずっと前から芸能人だ。
私の弟のまーくんがもうずっと
JADEの大ファンだったから、
私もその影響でよく聞いていた。
JADEの音楽は男っぽくて、オトナで、
かっこいい。
まーくんに限らず周りの男の子たちも
夢中だった。
高校生になると女の子達も神堂さんの
声とJADEの皆さんのルックスに
ドキドキしてた。
春はクールでステキ!とか
夏輝の笑顔が可愛いっとか
冬馬と秋羅に遊ばれた〜い!とか。
…芸能人だから、雲の上の人だから、
無責任な噂や勝手な想像で
キャーキャー言って騒いでた。

だから、まさか自分が芸能界に入って、
まさかあの神堂さんにプロデュース
してもらって、JADEと一緒に歌う
ことになるなんて!
…しかもまさかあの夏輝さんと
恋をするなんて!
夢にも思っていなかったの。
雲の上の人のはずだったから。

…だから、私はまだ夏輝さんとの恋に
おっかなびっくりで…全然自信がない。
両想いになったというのに、
夏輝さんに飽きられないか、
嫌われないか不安でしょうがない。


大好きだから。



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