Novel
□ライバル
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咲が妊娠した。
それはそれは我が家にとって今年一番の
大ニュースで、そしてそれはつまり俺ら
JADEにとってもスペシャルな慶び事。
妊娠が判ってスグ、メンバーからはまだ
人の形もしてないお腹の子にプレゼント
の嵐。ベビー服やら、もうとっくに処分
しちまって家には無いベビーカーやら。
安定期に入るまでは公表もしないって
事で、でも15年振りの妊娠は彼女のこの
変わらず華奢な体に負担が大きいかも
しれないってんで、彼女の芸能活動は
自粛する事になり。
彼女自身は自粛なんてするつもりは全く
無かったみたいだけど、今も変わらず
過保護な山田チーフマネージャーからの
強固なお達しでライブやツアーなんて
万全な体調でも消耗の激しい活動は全て
自粛して。長期撮影になるドラマや映画
なんてのも勿論お休み。
ただ、相変わらずオファーの絶えない
トーク番組や、もうすっかり定番にして
レギュラーで出演していたバラエティは
公表は未だの理由を話してロケは休んで
…そんでやっぱり、山田さんの判断は
的確だった。
酷い悪阻で食べ物全般受け付けずあわや
入院?! とまでなった咲。
何とか本人の努力で吐いても食べてを
繰り返し、乗り越えたけど、安定期に
入るまでに激ヤセして…一部報道にも
変な記事を書かれたりして。
でも安定期に入って公表し、今はもう
公然の自粛活動。
それでも続けてる彼女のラジオやたまの
トーク番組やバラエティでは共演者、
視聴者からの温かな励ましを貰って。
まぁ、それは彼女の好かれる性質ゆえの
人気の賜物なんだけど。
でもお陰で、彼女の周りはみぃーんな
彼女に過保護でさ。
俺が彼女の旦那だっつの。しかも今年
高校生の子供だって2人も居んのに。
もう籍入れて16年にもなるっつのに。
そんな日々、彼女との変わらずラブラブ
夫婦生活に不躾な心配したのは、彼女と
大の仲良しWaveの連中。
30代も後半(ほぼアラフォー)なのに
未だ現役国民的アイドルなんてやってる
こいつらはうちの奥サンと大の仲良し。
家でやる、ホームパーティやガーデン
パーティーなんてのには欠かさず全員で
出席しやがる。その上、最近男っぷりが
上がったなんて言われる様子もそのまま
俺の奥サンに馴れ馴れしく構い倒し。
『水城さんに未だ飽きないの？』
『双子諸共引き受けるから安心して
俺んとこおいで？』(誰がやるか！)
なんて好き放題、俺の眼の前で平気で
言い寄って来やがる。
ま、そんなの屁でもない位、俺らは
愛し愛されちゃってるからあいつらが
何を言おうと別に何の問題も起こらねぇ
けどな！
「そういえば知ってます？ 水城さん」
「あんだよ。」
「咲ちゃんにソックリの女の子を
着替えさせるゲームが出てんの。」
「ハァッ?! 何だよそのゲームっ！」
「やだなー、イヤラシイ想像しないで
下さいよー？ 健全なゲームですけどね
落ちモノ系の人気コレクションアバター
ってのが咲ちゃんにソックリって
有名になってて。…ちょっと待ってて、
今ググって見せるから。……と、ほら」
見せられたのは、カワイイアニメ絵の
うちの奥サン。いや、ちょっと前の彼女
というか、モロ、あの一度だけ着てた
際どい衣装の頃の…。
俺の頭の中を巡る、背中がモロ開きの、
山田さんもがOKを渋ったデザイナーの
冒険した衣装を着て恥ずかしがってた
彼女の姿。
「わ、何コレ！
まんま咲ちゃんじゃん！」
「あ、本当だ。ここまでソックリだと
版権とかどうなってんの？」
「や、だから知ってんのかなーって。」
「あーでもこういうのって難しいでしょ
着替えさせたり、髪型変えたりしたら
似てるだけですってなるだろーし。」
「でもほら、この髪でこの衣装なんて
まんま咲ちゃんあの曲のじゃん」
「ぐわー！ 何だこれ！」
「あ、知らなかったんだ。」
「まー知ってたらこんな反応じゃない
よね。流石に。」
「それ何処の?! 早速落としてこなきゃ」
「えっ、そっち？」
「…まぁ、だろうな。」
「あー、ってかもうそれで満足して
妊婦の彼女労わればいいんじゃない？」
「え、まさか妊娠中はシないんじゃ…」
「甘いよ、翔ちゃん。水城さんの野獣
甘く見過ぎ。励み過ぎて今までずっと
デキなかったって噂だよ？」
「え、じゃあ今回デキたのって漸く…」
「な訳ないだろ！
現役バリバリだっつーの！」
「ぅわ、咲ちゃんの苦労が
偲ばれるーぅ。」
「るせ。俺らはラブラブだっつの！」
そんな会話と共にゲットした、とある
アバターコレクション。
奴らも言ってた通り、俺の最愛の奥サン
ソックリで。しかも、最近は俺が幾ら
言っても着てくんなくなったミニスカ
とか、ニーハイとかそんな衣装も満載。
奴らの言ってた通り、絶対彼女の衣装を
真似た服だってあって。
そんなの、俺がハマんない訳ないだろ？
*