Event 1

□サンタとケーキの甘い夜
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「――亮太くん…っ、肩見せて!」

「…あー……」


ステージ袖に引っ込んで、皆で楽屋に
戻った途端、私は彼らの楽屋に入り込み
亮太くんを強引に引っ張って座らせた。


「わー、咲ちゃん大胆。」


亮太くんの、サンタっぽいけど格好良く
アレンジされてる衣装をパパパッ!と
はだけさせる私に冷やかす声を掛ける
京介くん。

咄嗟に顔が赤くなっちゃったけど、今は
そんな事で照れてる場合じゃ無くて!

そう思ってマジマジと亮太くんの素肌の
肩を見る。そっと触って熱感や痛そうな
様子が無いかを確かめて。


「――一応、炎症は起こして無いみたい
だけど…痛む? 湿布、貰ってくる?」


亮太くんのはだけさせた衣装を脱がせ、
彼の掛けてあるシャツを羽織らせる。
きっと自分で着るのは痛むだろうから。

そしたら、京介くんが一際大きな声で
また茶化して来て。


「うわ、甲斐甲斐しいなぁ…
いつもそんな事してんの?」

「バカ、京介っ」


真っ赤になって京介くんの揶揄いを
止めてくれる一磨さん。
翔くんも目の遣り場に困るみたいに
目線を泳がせてて。

自分のした事が随分大胆に思えて来て
アワアワしちゃったら…


「…前に傷めた所? またやった?」


静かに義人くんがそう言ってくれて。

――そうなの。
先月、亮太くんは舞台で肩に怪我をして
…でも、千秋楽直前だったから湿布と
痛み止め、それからテーピングで舞台の
皆さんには隠し通して乗り切って。

彼の望みだったから、私も病院に行く
ように言う以外は口出ししなかった。
だって、あまり強く言うと亮太くんは
意地になっちゃうとこあるから。

あの時も、心配して様子を見る私に、
亮太くんも段々居た堪れなくなって来た
みたいで、舞台が終わってから病院にも
ちゃんと行ってくれて。
筋を痛めてるから数日は使わず安静に、
って言われたって報告してくれたけど…
見てる限り、安静にしてるとは言えない
彼に、一度お説教したのだった。

…それから。
私は彼に過保護に心配するようになった
らしい。…冬馬さんに言われちゃった。

『男は咲ちゃんが思ってるより
丈夫に出来てるからダイジョーブ!
ミケくんなんて絶対筋肉の質も良いから
気にし過ぎだって!』なんて言われて。

でも、心配なの。
笑顔で無理しちゃう人だから。
頑張り屋で、我慢強い人だから。

そんな事を思って、今も心配で。
椅子に座らされ、私より目線の低い
亮太くんを見つめる。
そんな私の視線を正面から受けて、
亮太くんは蕩けるような顔で笑った。


「そんな顔しないで?…ってかその顔
俺専用だから、他の男が居るトコで
しないでよ。いくらメンバーでもさ。」


全然メンバーの皆さんの目も気にせず
そんな事を言う亮太くんに、ついさっき
京介くんに揶揄われた以上に真っ赤に
なって。そしたら余計皆が…


「うっわ、亮太が甘い…っ
何これ、胸焼けしそ…」

「…同感。」

「京介っ、義人っ!」

「り、亮太って咲ちゃんの前じゃ
こんななの…?! 」

「翔ちゃーん、ダメ押ししないの。」


なんて囃し立て出して。
お付き合いし出してまだ2年。
でも公表はしてない私たちの事は其々の
事務所と、家族とメンバーの皆、
それから気付かれちゃったJADEの
皆さんだけに知られてて。
元々Waveの皆さんと仲が良いからか、
全然違う京介くんと噂されたり、偶に
帰りを送って下さる一磨さんとの関係を
疑われたりしてるけど、亮太くんとの
噂は何故か少なくて。

それが最近、亮太くんの不機嫌だったり
してる。…でも、バレたら困るのは
私たちで、それはそれで仕方ないって
言うか、却って良いのかも?なんて
言った私に『お仕置き』して来た、
つい先日の亮太くん。

そんな事を思い出したら顔の赤味は
増しはしても引かなくて。


「ちょ……ナニこの艶。
亮太…何咲ちゃんを開発
しちゃってんの。ヤラシイなぁ」

「するに決まってるだろ。」

「京介っ亮太っっ!」
「亮太くん…っ」


真っ赤になった私と同じ、ううん、
私以上に真っ赤になった一磨さんと
目が合って、二人してもっと真っ赤に
なって。


「こら、これ以上はダメ。
その顔も俺だけの。――ほら、皆もう
散れよ。一磨と翔はラジオあんだろ。
義人はアナウンサーの『聖夜の朗読会』
とやらのゲストだっけ? …京介は聖夜
カンケー無しの乱れたパーティだろ。」


パッと真っ赤な私を抱き込んだ亮太くん

私の耳には、彼のシャツ一枚を通した
温もりと鼓動。彼の、珍しく少し早い
大きな拍動。

そんな事をうっとり思った私の耳に響く
亮太くんの…低い声。


「…京介、お前ステージで咲ちゃんの
腰抱いたの俺見過ごしてないから。」


――え、何の事…?
まさかさっきのPVの??



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