Event 1

□あのね
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【 あのね 】


夏輝さんの好きなところ…

優しいところ
照れ屋なところ
努力家でそれなのに驕らなくて

弛まない努力とギターへの愛
それはギターだけに、じゃ無い

あの熱い瞳
甘い囁き
…これはもう私だけが独占中。

ここまで愛されて甘やかされて
私の中で夏輝さんは大きくなるばかり

この想いをどうやったら全部
伝えられるかな


スキスキ
大好き
愛してる


そのどれも貴方には伝えた言葉だけど
言葉だけじゃなくてこの想い、
ちゃんと届いてる?


この心
全部開いて見せられたらいいのに

貴方と貴方に貰った全てで満ちた
私の心全部


そんな想いを込めて作った曲


優しいお日さまみたいな貴方を
想って綴ったこの旋律


まだ未公表な私たち。
だから変な勘繰りを避ける為に

好き、とか
愛してる、とか
そんなあからさまな言葉は選ばず
想いを込めた…曲。


編曲チェックをして頂いた時
いつも無表情の神堂さんの口元が
フと微笑んだ。


「――熱烈なラブレターだな」

「……へ?」

「お前の目には夏輝がこう映ってるのか
と…お前達をよく知る俺の脳内には
夏輝を見つめて微笑んでいる咲の
様子が鮮やかに再生される。…だが、
そうでは無い者ならばこの曲を聴き
愛する人を思い浮かべるのだろうな。
心の温かい部分にだけ触れられた様な
擽ったい不思議な感じだ。
音階の運びも技巧的にも成長している。
よくぞここまで自分の音を表現したな、
よくやった。」


予想だにしてなかった神堂さんのお言葉
そしてその優しい表情に一瞬キョトンと
して、少し遅れてワッと来た感激。

これも全部夏輝さんのお陰。
こんなにも満ち溢れる愛をくれた
貴方のお陰。
…そう思ったら喉が詰まった。
神聖なまでの愛しさで。


「…っ、あっありがとうございます!
わ、私は想いをただ綴っただけで、まだ
音階の並びや響きとか…っう、上手く
表現が出来てるのかどうかって感じなん
ですが…っ神堂さんにそう言って頂けて
物凄くホッとしました…っ」


思わず涙ぐんだ私。
そうして俯く私に神堂さんはポン、と
軽く頭に触れ、一見無表情なのに
やっぱり優しい瞳で言った。


「…涙はまだ早い。これからこれを
もっと磨き込んで行くぞ。」

「はい…っ」


プロデューサーらしい手厳しくも正しい
そんな導きで、現状で満足してしまい
そうな私をちゃんと叱咤して。

だから、私は自分に出来る最上の努力を
する!と自分を奮い立たせ、小学生の
ご褒美シールじゃないけれど神堂さんに
『この曲はきちんと仕上がってから
夏輝さんの耳には届けたいんです』と
内心を打ち明け、この曲の編曲と練習は
夏輝さんに聴かれ無いよう細心の注意を
払ったのだった。



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