Event 1

□あのね
2ページ/5ページ



「ちょ、聴いたかー?
あの可ぁン愛い〜〜曲♡」

「それ以上言うと氷詰めにされんぞ」

「えー? 何で氷?」

「春が番犬並みに気ぃ張ってっからな。
曲に関しての発言は気ィつけろ。
咲ちゃんの頼みでちゃーんと
仕上がるまで夏輝にゃナイショなんだと」

「え、何ナニ? その甘々ドッキリ!
…つーか咲ちゃんもまァ…
春に酷なオネガイすんなぁ…」

「まぁ咲ちゃんだからな。
それに別にドッキリでもねぇだろ。
単に咲ちゃんが夏輝LOVE!
っつーだけで。」

「カアァァァ――――…ッ!
何つーバカップルだよ、爆ぜちまえ!
…って嘘ウソ。あーもぉー咲ちゃん
何だってそんなに可ン愛いんだか!
あーッペロリと喰っちまいてぇなーっ」

「…気をつけろよ、ウシロ。」

「へ?」
ドゴッ!


振り向く冬馬のすぐ横の壁に、壁ドン
ならぬ壁ガン食らわした彼女の王子様。


「ナニお前、他人(ヒト)の彼女を
不埒な目で見てんだ。」

「わわ、なっちゃ…」
「場合によっちゃ本気で去勢するぞ?」


冬馬に皆を言わせず言い放った言葉と
冗談とは言えない光度で瞳の奥に怪しく
煌めく殺人光線。


「『他人の』じゃなく『俺の』だろ」

「当たり前だろ」

「即答かよ」


秋羅の揶揄いにエッヂの効いた声が返る
…その声は硬い。もちろん、そんなのを
見逃す冬馬ではなく。


「えー何ナニ? 何でそぉんな荒れてんの
ウチのリーダー様は? はっはァン、春と
姫の二人っきりでの密室の共同作業が
気に入んない? キシシ♪ やっだもぅ、
なっちゃんのエッチ! ホントウの夜の
共同作業はなっちゃんダケなのにぃ♡
欲張りだなぁー?」


ニヤニヤと井戸端のオバさん宜しく、
手をくの字に曲げ夏輝を叩き。


「――…ッ、」

「………って、え……?」


あまりの事に眼を見張る冬馬。
さて、その視線の先は。


「おい、夏輝」


二人の目には明らかに『図星』と書かれ
遣る瀬無さそうに視線を逸らす弱気な
リーダーの姿。


「…バッカじゃねぇの?
あの咲ちゃんの目に、お前以外が
映ってるワケがねぇだろってんだ。
その証拠に」
「――冬馬、口を慎め。
余計な事ばかり言うならその舌今日こそ
引っこ抜くぞ。ドラムを叩くには必要も
無かろう。」


もちろん、スタジオ奥から悠々大トリの
登場はJADEカリスマの春。


さて、三竦みならぬJADEの四竦み。
結果はどうなる?


そんな次回予告が入りそうな緊張感。


まぁモチロンそんな不安要素も何も無い
からこそお祭男の茶々が飛ぶのだけども


「なんつー余裕の無さだよ、
あーあ、天下のJADEのリーダーが
こぉんなラブラブのヨメ捕まえといて
溺れ切っちゃってまぁ」

「…それがデフォルトだろ、
夏輝の場合。」

「今更だな。」

「ワー、秋羅も春サマもひっでぇ。
でもそーなんだよなぁ。
それがなっちゃんで咲ちゃん、
っつーかさ。バカップル万歳?」

「だな。」


そんなこんなで皆で悪巧み(?)に
加担して

リーダー夏輝一人と、謀の張本人の
咲だけが様々な意味で
眠れぬ夜を過ごしたのだった。



*
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ