Event 1

□噂と嘘と悪巫山戯
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あの日はあの後、溜息を吐いてどうやら
冬馬さんの追求をそれ以上は諦めた様子
の神堂さんのお声でレッスンが開始され

今日に至る。

今日は4月1日。

巷では新たな元号が発表され、新年度
並びに新社会人の皆さんおめでとう!
というような全体的に明るい話題が注目
されてて…

私のスクープはやっと飽きられたかな?
って状態。…でも実はあの後も彼らは
彼方此方でイチャイチャしているのを
撮られてて…。

最近では各番組のコメンテーターさんに
『咲ちゃんもお年頃なんだし
まぁそんな目くじら立てて追い回さなく
ても…そりゃ好感度の高い彼女ですから
ここではもっと潔く認めて貰いたいって
のもありますけどねぇ』なんて言われ
たりで、庇われてるのか呆れられてる
のかって感じにもなって来てて。

事務所もこの件に関しては取材の電話で
仕事に支障が出ている状況に、流石に…
近々会見でもして真っ向から対処するか
って会議になっていて。

でもそれを止めた山田さん。
どうやら冬馬さんから直接情報が入って
いるみたいで、色々動いている様子。

…私の事なのに私だけ蚊帳の外に置かれ
ている事に不満がないわけじゃ無いけど
でも…山田さんも当の彼らには相当憤慨
しているようで、この話をするとかなり
きつめの毒を吐くから…それ以上は私も
流石に斬り込めなくて。

そんな状況での公開発表だった。


場所は大手テレビ局の有名大画面ビル
その前。

宇治抹茶さんとのお昼の番組で、その
大画面ビルの前を映した時だった。

生中継、というかこの番組自体が常に
生放送の番組で。

今回の真相(犯人の思惑とかではなく、
あの人が私じゃ無いって話)は一応番組
スタッフの皆さんは勿論、私を抜擢して
下さった宇治抹茶のお二人にも話して
いたから、この番組内で私の件は軽く
揶揄われるだけで流されてたんだけど…

今日の各地の行事予定などを紹介しよう
と、確認してらした原稿から顔を上げた
松田さんが大きな声で『おいっアレ!』
と叫んだ。バックに大きく投影されてる
画面を指差して。


「なんや隆やんっ、いっきなり耳元で
大声出しなや! 耳イカレるかと思たや
…え? あれ、は?! 咲ちゃん?!
え、咲ちゃんよなどう見ても。
ええっ、どないなってるん!」


画面を見て、横に居る私を見て、また
画面を見て指差している。


「…しかも、アレ、あの写真の男…、
あの写真から咲ちゃんの彼氏
とかって噂されてたヤツちゃうん。」


外のカメラがググッと彼らに寄れば…
あの、最近写真雑誌常連の二人が肩を
寄せて手を振っている。


「カメラマン! 行け! 抜け、俺突撃
インタビューしに行ったる!!!」


一条さんがあの軽いフットワークで
スタジオを飛び出して行く。


「あっおい慎! お前番組進行どないす…
あー…ありゃ特ダネに目が眩んで周り
見えとらんな。そりゃほうか、俺らの
可愛い咲ちゃんを悩ましとった
一件やもんなぁ。」

「ま、松田さん?」

「しゃーない、咲ちゃん俺らで
番組進行しよ。…と言ってもこの後は
特ダネ確保の慎の独断場やろうけどな」


そう言って悪戯っ子の表情で笑うレアな
松田さんにもビックリして。

でもそれ以上に画面を見てもっと驚いた
のは、その画面にとても目立つ人が出て
居たから。

そう、冬馬さん。

しかも顔を隠そうともせず、堂々と画面に
手を振って。そんな中、スタジオの中で
更にザワつき。

プロデューサーの元に運ばれる携帯、
それに慌ただしくマイクが繋げられる。


「咲ちゃん、電話!」

「へ?」

「JADEの神堂さんから!」

「えっ? へ??」


慌てて携帯を受け取る。
保留を解除したら後ろの画面は分割され
外の様子とスタジオでの私たちの様子、
それから携帯の神堂さんの参考映像。


「し…神堂さん? 咲です…」

『ウチの冬馬が騒がせてしまって
番組を荒らしてすまない。只今番組を
楽しまれている皆さん、並びに番組
スタッフの皆さんも申し訳ない。』

「へっ?! え? そ、そんな事は…」

『例の件、ヤツがカタをつけようと
このような形になった。』

「えっ、あ! コレ、冬馬さんが?!
え、一体どういう…」

『それは俺にも分からない。』
『ちょっと待った、春! それじゃ
咲ちゃんも番組進行上困る
だろ!…ごめんね? すみません皆さん
JADEリーダーの折原です。番組中突然
失礼します。少し説明させて下さい。』


神堂さんの電話を奪い取ったのか、突然
夏輝さんが話し手となった。


『俺らJADEにとって、春がプロデュース
してて、俺らとコラボもしている彼女は
とても大切な…そうですねもう一人の
メンバーってくらいには大切な人なので
…そんな彼女が謂れの無い誹謗中傷、
更には私生活に支障まで来たしている
のを目にして放って置けませんでした。
俺らも…また番組を一緒に作られている
そちらの皆さんも彼女の人となりと
今回の事情は知っていると思います。
今まで写真週刊誌、並びに各方面の
エンタメニュースを賑わせていたのは
彼女ではありません。
それを踏まえ、この後の展開をご確認
下さい。コレが真実です。…では番組に
マイクここでお返しします。突然の乱入
失礼しました。…咲ちゃん、
番組スタッフに電話返して?』


そう言われるままにスタッフに返した
携帯は、よく見ればストラップも付き
傷だらけのケースからも察せられる様に
番組スタッフ個人の携帯だったようで…

ペコリと受け取ったあのADさん、
あっそう言えばちょっと前に冬馬さんと
デートしたって話してた!
え、もしかして…そういう繋がりで?

え、えええ???



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