Event 1

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『今日…って、11月、22日?』


多忙な彼女。
テレビ業界は生放送でなければ季節先取り
先読み的な撮影も多く、日付の感覚が無い
事も多い。…だから彼女に日付の感覚が
無くても当然だったし、何なら俺だって
普段は曜日も日付も怪しい。

…ただ、今日はつい、思っちゃったんだ。
『…いい夫婦の日って…。
咲ちゃんとなら、そうだな…
彼女となら俺もそうなりたいな』なんて
夢想して、願ったんだ。

…そう、願った。
そう、そうなりたい。
彼女と好き合って、愛を育み夫婦になって
…鴛鴦夫婦、仲良し夫婦でずっと一緒に。

それは確かに本音だけど、その前に俺は
彼女にしなきゃいけなかった。
告白して付き合いを申し込んで、その時に
初めて改めて『結婚を視野に入れた恋人
付き合い』を、と。
その順序をすっ飛ばして何言ってんだ俺?!
って改めて自分の失言にアワアワして。


そしたら俺以上に素っ頓狂な彼女の応え。


『…ああ!
今日ってワンワンにゃんにゃん…?
え、そうなりたいって…』


脳内恐慌状態に陥った俺の耳には冒頭の
『ワンワン』より『にゃんにゃん』のが
印象強く。

――え、にゃ…ニャンニャン…?!
そりゃそうなりたいって、いずれは…
って言うか許されるのならいつだって…!
ってバカかっ、彼女がそんな意味で言う筈
ないだろ!

なんてグルグル。


『あ…! ミィちゃんに何かスペシャルな
プレゼント上げました?…私も一緒に
お祝いしてもイイんですか?――あ、
でも今からじゃ遅い時間に…』


まるで深夜のこの時間にこっちまで来て
くれそうな内容の言葉。

俺は頭ん中のピンクな想像を追い出すのに
必死で「え?…え?! 」って更に恐慌状態。
彼女に何を言われてるのか、その可愛い
声の言葉は頭をスルー。


『夏輝さん…?』


彼女の甘い、可愛い声。
甘えるような、困惑するような…でも
明らかな好意が滲み出した、その声。


『え…、あの、違ってました?
あの、今ちょうどそんなCMが流れて…』

「えっ、あっ、違わない!…って、そんな
意味で言った訳じゃ無いんだけどっ」

『「そんな意味」…?』


――ああ、もうっ!
どんどん墓穴を掘ってる気がする。

でも俺の、気持ちは本気で。
彼女と一緒に居たい。
夫婦でもニャンニャンでも。
一番近くで…何なら奥までピッタリ深く
まで繋がって…ってだからそういう意味
じゃなくて!


『夏輝さん?』

「――俺、咲ちゃんが好きだ。
…もうバレバレだと思うけど、君が好き
なんだ。結婚したいくらい好きだし、
って言うか、君と結婚したい。今スグって
訳にはいかないだろうけど来年、再来年の
今日は…『いい夫婦』の日として二人で
過ごして行きたい。この先ずっと!」


…………。


――言ってしまった…。


殆ど勢いで
でも嘘は一つもなくて…。
でもやっぱりフライングなのは違いなく。


しかも、電話。
顔も見れない、この状態での大失態。

それなのに。


やっぱり君は俺の唯一の人、愛しい人。

こんな俺の大失態をグルリとひっくり返し
大団円。


『わぁ……、素敵…。
わ、私…今、夏輝さんにこ、告白…?
え? ぷ、プロポー…? え、わわ…っ、
あの、ほ、ホントに…?? えぇ…っ?!
こんな素敵な…今日、いい夫婦…あっ、
ホントだ11(いい)22(ふうふ)なんですね!
そう言えばうちのおか…あっ両親がっ
今日デートするって…、それで…。
わっ私たちもそんな風に? …ぜひ…っ
夏輝さんとなら、是非…っそうなりたい
です…!』なんて。


今にも泣き出しそうな、でも歓喜の気配
濃厚な、震えながらも弾んだ声。


――この日が…俺らの、初めての
記念日になったんだ。


二人の気持ちが繋がった日、
告白記念日

夫婦という共通の夢を持った日
…二人の未来が一歩を踏み出した日。


そんな
二人の、今日。








Happy Couple’s Day 2020 xxx











end.

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