Event 1

□恋企画
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そんな山田さんの読みに、私は慌てて
夏輝さんへと電話を架ける。


『もしもし咲ちゃん?
どうしたの、珍しいねこんな時間に…』

「ごめんなさいっ夏輝さんっ!
わ、私っ知らなくてっ! あの…っ、
皆さんのご意見のドラマ…っ企画が
通っちゃって…っ」

『わわ?! え、ちょっと待って、一体
何の話…? あ、意見? …ドラマ?
それってもしかして…』
『え、何ナニぃ〜? 咲ちゃん?
なっちゃん独占禁止ぃー! イェー、
スピーカーにしちゃれ!』

「はい…ッ、あのっ、CDDTVの…っ
皆さんのアンケートを元にした…っ
あッ冬馬さん…ッ」

『ほいほーい、冬馬さんですよー?
…ん? アンケート?…もしかしてあの
アンケート企画? 咲ちゃんOK
しちゃったん? うわぉ、内容見た?
え、あの山田さんがよく許したね?』

『えっ?! あの冬馬がふざけてたヤツ?! 』

『そりゃヤベーな、あの妄想劇じゃ
俺らのムッツリ疑惑浮上し捲んだろ。』

『…何故俺らが』

『そりゃアンケート拒否した春名義の
分も冬馬が書いて出してたからな。』

『イェ〜! 男のロマンのアル事ナイ事
詰めさせてイタダキましたー♡』

『…悪い予感しかしねーな』

『………。』

『うわ…何書いてたっけ、冬馬?』

『上目遣いで「パックンチョさせて?」
って言われてぇ♡、とか?』

『ッ……?!?!?! 』
――プツッ、ツーツーツー……

「なっ、夏輝さん…?! 」


突如、通話が切れて響いた電子音。
驚いて呆然とした私。ハッと我に返って
リダイヤルしてみるも繋がらなくて。

暫し後に架かって来たコールを取れば


『もしもしっ、咲ちゃん?!
ごめんね?! 速攻であのアンケートの
内容取消しの手配するから…っ』

「あああの、実は今から撮影で…」

『ええっ?! 』

「あッ、いえっあのッ皆さんの意向と
違うのなら私今から断って…っ」

『えっ、でもそれじゃあ番組との契約上
咲ちゃんが後々迄責められちゃう
んじゃないの?…これはウチの冬馬が
悪ノリした事が原因なんだからこっちで
処理はするから安心して。』

「あの、でもOK出したのは私なので…
その、皆さんの意向を考えもせず、
勝手に返事しちゃってごめんなさ…」

『…え、監督のゴリ押しじゃなく?
咲ちゃんがOK出しちゃったの?
…山田さんは何て?』

「はいっ、…えっ山田さんですか?
えと…演技の幅も広がって話題性がある
なら構わないって…」

『ぶっは! スゲープロ根性。
なぁなぁ、なっちゃん? 咲ちゃん
本人がOKっつってんのにココで俺らが
騒いだら逆に咲ちゃんにメーワク
かけちまわね?』

『だからってお前ッ、あんな下卑た台詞
とか…っ咲ちゃんのイメージがっ』

「あああのっ、夏輝さん? その…っ、
大丈夫ですよ? あの、一応私の解釈、
と言うか…演じ方次第だって言われて
ますし…っ」

『…本当に? 変な演出とか、コレは
流石に…ってものがあったら速攻俺に
連絡してくれる?…ちゃんとJADEの
意向として対応するから。』

「へ?…はい、心強いです! あの…
大丈夫ですよ? 現場には山田さんも
居ますし…その、私もJADEの皆さんの
イメージを崩さないように、頑張ります
から!」


あまりに心配なさる夏輝さんに無意識に
電話口で見えもしないガッツポーズして
そうお伝えすれば、夏輝さんも一応は
納得してくれて。


私としても、皆さんの意向を無視して
勝手な事をし…ご迷惑を掛けたい訳じゃ
無いから、夏輝さんのお言葉にホッと
して、その日は撮影に臨んだのだった。


――実際、ちゃんと確認した台詞の数々
…中にはこのタイミングで、コレ、…で
あってる??みたいなのもあって、時々
ストップが掛かっては目の吊り上がった
山田さんと監督、スタッフの方が協議
する、なんて普段の撮影じゃ有り得ない
場面もあったりして…私はそのいつもの
ドラマ撮影とはまるで違う現場に困惑
しながらもお仕事を終えた。


「今、全て撮影終わりました!
特に問題無く、終えましたよ?
皆さんご心配お掛けしました!
オンエア、楽しみにしてて下さいね?」


改めてご心配をお掛けしたお詫びも兼ね
夏輝さんにお掛けした電話。さっきの
通話から数時間も経った後だったのに
皆さん揃ってらして。
どうやら音の感じでスピーカー通話だと
判断して、皆さんに通じるようにお話し
すれば


『え…あ、お疲れ様。…そうなの?
…なら良かった。』

『…咲、大丈夫か?』

「へ? はい、大丈夫ですよ?」

『…なら良いが…』

『だから言ってんだろ、山田さんも一緒
なんだからこんな事しなくたって…』

『お前が言うな! 元はと言えばお前の
悪巫山戯が原因だろ!』

『違いねぇ。反省しろ。』

『なーんだよ、秋羅まで!
皆 内心 役得だとか思ってっクセに…
って、タンマタンマ! 流石に車では
ヤバイって!』

「え…? 車??」

『――何でもないよ、咲ちゃん。
もう今日は上がり?』

「え?…いえ、今から山田さんと別の
現場に向かいます。」

『そっか、お疲れ様。気を付けてね。
今度春のレッスン、来週だっけ?』

「あっはい! 宜しくお願いします!」

『うん、今度は確実なんだって?
皆楽しみに待ってるから。』

「はい、もう映画はクランクアップした
ので急な変更はない筈なので。あ…っ、
少し過ぎちゃいますけどバレンタインの
お菓子、差入れに持って行きますね!」

『うん、ありがとう。楽しみにしてる。
…山田さんに宜しくね。』

「はい!」


そうしてご心配をお掛けしたお仕事の
報告も終え、私は心も軽く次の現場へと
向かって。


*
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