Event 1

□Sweet Sweet
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【 Sweet Sweet 】


pattern:W


2月14日、想いを伝える日。
日本では女子から男子へ…ってのが定番
だけど、海外じゃ想い合う人がお互いに
贈りあうのが普通らしい。




コンコン

控え目なノック。
今日のゲストは彼女だからこのノックは
多分、間違いなく彼女。

「どうぞー?」

「おはようございます!」

ドアの隙間からピョコっと顔出して彼女
天野咲ちゃんが挨拶する。
彼女がこんな登場をするのは珍しい。
通常ならば、礼儀正しくちゃんと入って
来て律儀に毎回ペコリと挨拶するのに。

皆そう思った様で彼女の動向に注目して
いるのがわかる。
…嫌だな…皆の彼女へ対する関心が高い
って事が如実じゃないか。

「あの…これ、皆さん沢山頂いてるから
どうかとも思ったんですけど…いつも
お世話になってるお礼っていうか…。
丁度今日収録だし、っていうか…。」

華奢な彼女の背中に大きな紙袋。
いつもより歯切れの悪い言葉。
差し出された人数分の小さな小箱。

ああ、楽屋に山積みにされたチョコを
見たから…?

高級そうなラッピングの物や大小様々の
カラフルな小包達。
君からのチョコをこれらと同列に扱うと
思ってる?

しかもその紙袋と可愛いラッピングと
彼女の性格から察するに彼女の手作り
なのは間違いない。

「わぁ!チョコ?! やったー!」

真っ先に飛びついたのは翔。
早速咲ちゃんから受取っている。

「皆同列ってのが気になるけど、まぁ
楽屋で渡してもらう分にはそうだよね。
本命チョコは後で別口で…ナイショで
貰えるんでしょ?」

「えっ?! 」

彼女の上からスイッと気障にチョコを
取り上げるのは京介。

「うっわ、何その自信。ほら、見て?
咲ちゃん苦笑だよ、苦笑。
手作り? さっすが咲ちゃん!」

「そ、そんな…!」

両手でちゃっかり彼女の手を握りながら
受取る亮太。キラキラアイドルスマイル
混入済み。

「ありがとう、わざわざごめんね?
忙しいのに大変だったんじゃない…?」

「いいえ? 皆さんにはいつもお世話に
なりっ放しで、こんなことくらいでしか
感謝も伝えられないんですけど…。」

気を使いつつ、皆が言い忘れてる肝心の
お礼を口にしながら受取る一磨。

最後の1個は咲ちゃん自ら義人の手に。

「ありがとう…中身は何?」

「プチガトーなの。一口サイズのガトー
ショコラにしたんだけど…多分皆さん
この時期は頂き物の甘いものばかりに
なっちゃってると思って、甘さ控えめに
してるんだけど…どっちにしても甘い物
には変わりないって言うのに今更ながら
気付いちゃって…ごめんなさい!」

真っ赤になって焦る様子が可愛らしい。
そんなの、君からこの日に貰えたという
だけで嬉しいのに。

早速皆が開けているのを横目に、自分も
貰った小箱を開ける。
甘いチョコと香ばしい香り。
一口サイズの丸いショコラに混ざって
一つだけ…ハートの形のプチショコラ。
パッと見、目立つ訳では無いだけど…
これだけアイシングでメッセージが。



「スキ」



思わずパッと見回すと、皆が手にしてる
のはただの丸いプチショコラ。
慌てて彼女に目をやると真っ赤になって
楽屋を出て行こうとする所だった。

これって、俺に…だけ?


思わずニヤけそうになる口元を押さえて
彼女の後を追いかける。



さて、どうやって彼女を捕まえようか?





end.


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