Event 1

□噂の人
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顔もアルコールと恋バナで仄かに赤く、
更に目がうるうるした彼女は女友達から
見ても、ちょっとドキリとする色気が
あって。

今まで一番お子様お子様していた彼女が
明らかに今の夏輝との恋によって、女性
として花開いたのは明確で。

だから訊いてみたい。
友人として女として、この先も永遠に、
なんて思える本気の恋がどんな物なのか
…例え各々に違う恋があるのだと解って
いたとしても。


「夏輝、優しいって言ってたもんね。」

「うん…優しい。」

「それってベッドでも?」

「うん?」

「ほら、ベッドヤ○ザとかって男も居る
って言うじゃん。」

「何、ベッドヤ○ザって!」

「優男がベッドでだけオラオラ系になる
…らしいよ?」

「えー、それってどうなの。」

「さぁ、好きな女は好きかもね。
あたしなら絶対ヤだけどなー。
女大事に出来ない男はクズ!」

「それ、アンタが言う?」

「経験から学んだの!」

「なるほどね。」

「――で、夏輝はベッドでも優しいと」

「うん。」

「初めての相手に最適?」

「良かったじゃん。」

「うん…♡」

「…でも、ずっと夏輝だけでイイの?」

「…え?」

「こら、あゆみ!」

「だってぇ…」

「…わたしね…」

「え?」
「うん?」

「なつきさんのことすきなの」

「それはもう聞いた。」

「酔ってるなぁ…」

「でね…なつきさんやさしくて…わたし
いつもしてもらうばっかで…でもね」

「やだ、惚気?」

「惚気以外にないでしょ。
あゆみが変な事訊くからー。」

「わたしにしたコト、ほかのコにもした
のかなぁ…っておもったら…かなしくて
…でも、もうほかのコには、ぜったい…
わたしたくない、の…。」

「「…。」」

「だから、わたしも…ほかのヒトとは
ぜったい…しない…。」

「咲らしいなぁ…。」

「…うん。あたしもそんな風に想える
恋がしたいなぁ…。」

「その内出来んじゃない?」

「いーかげん!」

「だって、占い師じゃないもん。」

「まぁね。」

「…。」

「あ、咲寝そう! 早いよ!
もー折角集まった意味無いじゃん!」

「今朝も急な仕事入ったって言ってたし
疲れてんだよ。」

「えー、じゃあ夜中女子会ほかの日に
したら良かったのに!」

「あゆみが課題制作で来月は無理とか
言ってたからでしょ?」

「え?そうなの?」

「うん。再来月とかになるとまた自分の
予定が分かんないからって。」

「…咲らしいや。」

「んね。」


親友2人に見守られて、お酒を手にした
まま机に突っ伏す咲を肴にして、
勝手気ままに会話をする2人。


「優しい優しいってさ、でもそれって
どうなの? 逆にエッチ弱そう。」

「…朝までって事もあるらしいよ。」

「え!なんであんたそんな事知ってんの
…もー咲は七海にばっか話すんだ
からっ!」

「あー違う違う。カマかけたらポロリと
吐いたんだよ。電話しててさ、眠たそう
だけど昨日寝かせて貰えなかったの?
って訊いたら、恥ずかしがってウンって
言うから。手加減して貰いな?って。」

「ウソー!あの夏輝が?! 」

「マジ。」

「だって、夏輝ってファンクラブでの
リサーチでも、女の影まるで無かったん
だよ? てっきり草食男子だと!」

「アタシも受けた印象はそうだったけど
…咲限定の単食男子なんじゃない?
でなきゃ咲がよっぽど美味しいか」

「単食っ!パンダの笹、みたいな?」

「そ。またはコアラにユーカリ。」

「夏輝は咲しか食べない、と。
でもやっぱそれなら咲が美味しい
からって事じゃないの?」

「アタシは鶏が先か卵が先かって位に
どっちもだと思うけど。」

「なるほどねぇ…じゃホントにこのまま
結婚まで行くかもね。夏輝と。」

「折原さんはその気だって。」

「え?プロポーズされたの?! 」

「ううん、折原さん本人からこないだの
電話でカミングアウトされた。」

「ぎゃー!なんで今頃それ言うの!」

「…だってタイミングが。」

「咲は知ってんのかな?」

「さあ?…でも、不安にはなってない
みたいだし、ちゃんと彼の気持ちは
伝わってんじゃないの?」

「…そっか…」

「結婚式のスピーチの準備でもしとく?
歌とかはゴメンだけど。」

「あー、あたしも七海と歌は勘弁だわ」

「…悪かったね。」

「スピーチ原稿は任せた!
何ならあたし喋るから。」

「…咲の性格だと2人とも別口で
依頼されるよ。たぶん。」

「ぅあー、そっか、そうだよねー?」


親友は2人で頭を抱えながらも大好きな
咲の寝顔を肴に延々と夜中まで話に
盛り上がったのだった。



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